CNBC報道によると、トランプ氏が当選を果たした16年選挙で最高額の献金者だった億万長者のロバート・マーサー氏も、先の中間選挙でトランプ氏が個人的に後押しした候補者たちが主要州で相次いで敗退したことなどを理由に、次回大統領選挙での「トランプ不支持」を表明した。
このほか、全米保守層の間で圧倒的視聴率を誇る「Fox News」テレビや、財界・経済界に絶大な影響力を持つ「Wall Street Journal」紙、「New York Post」紙など多数の媒体を所有する〝メディア王〟ルーパート・マードック氏はかねてから、トランプ氏と絶交状態にあるのみならず、舌鋒鋭い個人的批判まで続けており、今後、選挙戦が本格化するにつれて、これらのメディアの論調にも微妙な影響が及ぶことは必至とみられている。このうち、「Wall Street Journal」紙はすでに、中間選挙開票結果判明の翌日に「トランプが共和党最大敗北者」と題する社説を掲げ、同氏を厳しく非難したことが知られている。
3つの不安要素
それでも一方で、いぜんとして各州にまたがる多くの工場労働者、農業従事者などからなる熱狂的トランプ支持層の存在もあなどれない。
例えば、20年大統領選の場合、これらのトランプ支持層がオンラインなどを通じ1口10ドル、20ドルといった小口献金を行った結果、総額にして、7億7400万ドルという巨額の資金がトランプ陣営に渡ったことが明らかにされている。
従って、今後再び、トランプ氏が自ら開設したチャット・メディア「Truth Social」などを通じ、得意の煽情的な支持呼びかけのメッセージを送り続けるとすれば、こうした低所得者層からも一定程度の政治資金が集められる余地は十分残されている。
ただ、前回と同規模の選挙資金集めが期待できるかどうかについては、不安要素がいくつかある。
そのひとつは、現職で再選に臨んだ前回選挙とくらべ、次回選挙では〝在野〟の立場であり、メディア露出、アピール力、選挙戦の組織力、スタッフ動員力などにおいてはるかに見劣りがすることは否定できない。
二つ目は、選対本部および党全国委員会から拠出される選挙資金の動向だ。このうち次回選挙に向けた党全国委拠出金については、予備選段階でマイク・ペンス前副大統領、デサンティス・フロリダ州知事、マイク・ポンペオ前国務長官、ニッキー・ヘイリー前国連大使、ティム・スコット上院議員、グレン・ヤンキン・バージニア州知事らの出馬も取りざたされており、そのうちの何人かが実際に名乗りを上げた場合、共和党全国委としては、トランプ候補にだけ応援資金を出すわけにはいかなくなる。当然、トランプ氏が受け取る資金規模は20年選挙時に比べ半額以下となる。
そして三つ目は、トランプ氏のさまざまな不正疑惑をめぐる地方、連邦政府レベルにおける捜査状況との関係だ。
まず、地方レベルにおいては、今月7日、ニューヨーク連邦地裁大陪審がトランプ氏の経営する不動産会社「Trump Organization」に対し、脱税、虚偽申告など17項目に及ぶ容疑で初めて「有罪」評決を下したばかりだ。この評決では、トランプ氏ら個人の罪は問われていないものの、何十年にもわたり本人が経営すべてに直接かかわってきた会社であるだけに、会社の社会的信用が大きく傷つくのみならず、トランプ氏個人の名声と手腕自体に世間の不信が高まることは必至だ。
同時に連邦レベルでも、司法省が①フロリダ州マイアミの自邸内に国家機密書類多数を隠匿した、②21年1月の連邦議事堂乱入・占拠事件に関与した――の2つの容疑について、精力的な捜査に乗り出しており、去る11月中旬には、トランプ氏起訴を視野に入れた「特別検察官」を任命している。