2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年6月17日

 5月17日付ウェブ米Diplomat誌で、Toshi Yoshihara米海軍大学教授及びJames Holmes米海軍大学教授は、連名で論文を掲げ、米中の海軍バランスは、米国の圧倒的優位にあるものではなく、米国は沿海域戦闘艦を導入するとともに、攻撃型潜水艦を倍増するようなことをしないと、東シナ海、南シナ海、そして西太平洋を中国海軍に明け渡さなければならなくなる、と説いています。

 すなわち、中国は海軍を拡充し続けてきたにもかかわらず、米海軍の優位は揺らいでいないと言われてきたが、今や、その優位には確信が持てない。中国の艦対艦ミサイルは、米軍の空対艦ミサイルの射程を上回る。旅洋型ミサイル駆逐艦搭載のレーダーは、米国イージス艦と同様のフェイズド・アレー型に類似して見える。

 中国が保有する対艦巡航ミサイルは、120~130カイリの射程を持つ。これに対応する米国のハープーン・ミサイルの射程は70マイルに過ぎない。

 米海軍は圧倒的優位の下で作戦することに慣れ過ぎ、実際の海上戦に対する装備、心構えを欠いている。イージス艦にしても、弾道ミサイル迎撃に艦内人員・スペースを取られており、艦体の強度、海上戦へ対する兵員の充分な訓練、対応能力を欠く。

 しかもアジアは米国から遠く、前方展開基地が必要だし、兵器は高価、兵員の給料、年金も高い。このままだと、中国に近接した海洋、あるいは西太平洋で、海上戦を中国と行なうことは無理になってしまう。中国は陸上配備の対艦兵器も備え、空母等を狙う弾道ミサイルも持っているのである。

 米国海軍は、中国に対する優位を維持、拡大しなければならない。予算に制約がある中で、海軍は沿海域戦闘艦 を開発する代わりに、多目的の重装艦で済まそうとしているが、これでは相手側を射程の観点から優位にしてしまう。

 日本はかつて、自分の海軍の優位が失われかねない瀬戸際にあった1904年に旅順を襲い、1941年に真珠湾を襲った。中国も同じ誘惑を感ずるかもしれない。

 潜水艦では、米軍は優位にある。しかしそれでも、東シナ海、南シナ海、及び西太平洋で常時活動できる攻撃型潜水艦は22隻しかない。これでは中国艦隊の基地近く、及び海峡地点で中国艦隊の出撃を捕捉することしかできない。したがって、潜水艦を倍増させる必要である。


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