2024年4月20日(土)

家庭医の日常

2022年12月24日

一次予防と二次予防の違いとは

 心血管疾患には、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、心不全、末梢動脈疾患などがあり、死に至ることも多く、命をとりとめたとしても障害や合併症で不自由な生活を強いられる原因となりうる。そのため、心血管疾患を予防することは、家庭医にとって重要な仕事の一つだ。

 心血管疾患の予防は、対象となる患者が心血管疾患にかかったことがあるかどうか(既往歴の有無)によって区別する。心血管疾患の既往歴がない人に対して今後も心血管疾患にかからないように予防することを心血管疾患の「一次予防」と呼び、心血管疾患の既往歴がある人に対して再び心血管疾患にかからないように予防することを心血管疾患の「二次予防」と呼ぶ。

 実は予防の分類にはもう一つあり、混同してしまうので注意が必要だ。それは、「一次予防」は病気にならないようにすること(例:生活習慣の改善、予防接種)、「二次予防」は病気を早期発見・早期治療し、重症化しないようにすること(例:健康診断、保健指導)、そして「三次予防」もあり、それは機能回復を図り再発を予防すること(例:リハビリテーション)、というものだ。とりあえず、この分類は今回の診療では使わない。

心血管疾患の二次予防

 T.S.さんは1年前に心筋梗塞をおこしているので、再び心血管疾患にかからないように二次予防をすることになる。心血管疾患の二次予防については、多くの臨床研究のエビデンスから、次の内容に取り組むことでほぼコンセンサスは得られている。

 食事では、ナトリウム、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の摂取を減らし、カリウム、野菜、果物と低脂肪乳製品の摂取は増やす。運動は、1回20〜60分の有酸素運動を週3回以上行う。

 適正な体重(BMI で18.5〜24.9 kg/m2)と血圧(合併症の有無も含めガイドラインで違いがあるが、少なくとも140/90 mmHg未満)を維持する。タバコを吸っている人は禁煙し、吸ってない人は受動喫煙を避ける。大量の飲酒は控える。

 薬物については、アスピリンとLDLコレステロールを下げるためのスタチン剤が通常使用される。アスピリンの解熱・鎮痛作用は一般にもよく知られているが、血液成分の一つである血小板の凝集を抑える抗血小板薬としての作用もあることはあまり知られておらず、T.S.さんの疑問にもなったのである。抗血小板薬と言われて理解できなくても「血液をサラサラにする薬」と言えば、「ああ聞いたことがある」という人も少なくないだろう。


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