ロシアが〝苦戦〟を強いられた結果
プーチン政権は圧倒的に勝る戦力により早期決着をもくろんだが、ウクライナ軍は今もなお驚異的な粘りをみせている。侵攻を終わらせることはできず、各国による制裁がロシアの首を絞めていった。
主な制裁は▽各国の中央銀行が保管するロシア中央銀行の外貨準備の凍結▽ロシアの主要銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除▽プーチン大統領や主要閣僚、プーチン氏に近いオリガルヒと呼ばれる新興財閥の資産凍結▽ロシアの航空会社の締め出し――など。ロシアからのエネルギー輸入の停止なども打ち出した(「ロシア経済の悲惨な末路 ソ連崩壊の悪夢再来か」)。制裁は現在も続いており、ロシア経済や市民生活にダメージを与え続けている。
ロシアが〝苦戦〟を強いられた要因は、ウクライナの軍事的な抵抗だけではなかった。14年のクリミア併合の際に成果を上げていた情報戦において、さまざまな誤算があった(「プーチンの誤算とディスインフォメーションの限界」)。
ウクライナのゼレンスキー大統領による想像以上のリーダーシップの発揮、簡易なフェイク動画などでは見破られるというディスインフォメーションの「量」ではなく「質」への変化、〝正しい情報〟が一瞬にして広がるSNS時代の情報の拡散力を見誤っていたという。
ロシア軍が想定以上に損害を受けていたということから、プーチン大統領がシリア人傭兵部隊を投入するという事態も取りざたされた(「ウクライナ戦争に投入されるシリア人義勇兵の正体とは」)。ロシア軍の人員に関しては、後に予備役30万人を対象にした動員令を出しており(「招集から逃げる人々 ずさんすぎるプーチン政権の動員令」)、混とんとした事態は続いている。
ロシア経済制裁の日本への影響
戦争が長期化する中で、両国による攻撃や制裁によるエネルギーや食料面への影響が世界から日本にも及ぶようになる。
ロシアへのエネルギー依存度が高い欧米諸国は需給がひっ迫。フィンランドでは、冬の街灯もが危ぶまれた(「エネルギー危機、拡大へ フィンランドの街灯が消える日」)。欧州諸国はロシアから米国、中東といった資源の供給源の転換を図っているものの、一筋縄ではいかない状況が続いている。
もちろん、この影響は日本も例外ではない。電力逼迫、電力料金の値上げは現在進行形の問題であり、エネルギー供給を見直しが求められる(「これぞ亡国の道 再エネは日本の主力電源にはならない」)。
このほか、食料生産に必要な肥料においても、三要素の一つである塩化カリは4分の1をロシアとベラルーシから輸入していたため、高騰が懸念され続けた(「止まらぬ肥料価格の高騰に日本は耐えられるのか?」)。また、燃料費の高騰が水産業へも影響を及ぼした(「燃料高騰が日本漁業直撃!もったいない獲り方変えよう」)。しかし、どちらのケースも旧態依然とした考えを改めるきっかけにもなったと言えそうだ。