2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2023年1月4日

ビートルズから学ぶビジネスの指針

『お金の流れで読み解くビートルズの栄光と挫折』(秀和システム)

 1962年のレコードデビューから2022年で60周年を迎えたビートルズ。音楽的に最も成功したロックバンドの一つであることは論を待たないが、そのビートルズでも実はビジネスでは苦労して多くの失敗を重ねていたことがわかる本が『お金の流れで読み解くビートルズの栄光と挫折』(秀和システム)である。

 振り返るとビートルズは音楽的にもビジネス的にも先進的なバンドであった。当時のレコード製作はもちろん、多くの観客を収容可能な巨大スタジアムや日本では武道館でのコンサート、ミュージックビデオの作成など、現代のアーティストが当たり前のようにやっていることを半世紀以上前から先取りしてしたことは驚きである。

 その背景にはデビュー当時のビートルズを成功に導いた辣腕マネージャー、ブライアン・エプスタイン氏の存在があった。エプスタイン氏の優れたマネジメント能力と売り込みの力でビートルズは短期間でスターの座を獲得し、若者の心をとらえて世界を席巻した。

 しかし、そのエプスタイン氏が1967年に急死すると、メンバーを束ねていた指導者を失ったビートルズは混乱へと突き進む。メンバーはまだ20代の若者であり、ビジネス面での手腕に乏しかったゆえに、税金対策や楽曲の版権管理などが不十分で経済的に苦境に陥った。その後ビジネス上の問題も一つの大きな理由になって解散へと進んでゆく様子が描かれる。

 本書はビートルズの歩みを追いながら、商業的に成功したとしても、管理がしっかりしていなければ成功は長くは続かないという現代ビジネスの要諦を学べる教科書的な側面も持つ。音楽ビジネスのみならず、多くの分野に当てはまる教訓ともいえる。

 これらのほか、22年は国際情勢を反映してウクライナや中国関連の出版が多かったほか、欧米のインフレや国内で食料品価格の値上げが相次いだことを受けて、物価について解説する本も多かった。今年はどんな本が生まれてくるのか、今から楽しみである。

   
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