2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年6月20日

 5月22日付、米Washington Post紙の社説は、47年振りのミャンマー首脳の訪米を受け、ミャンマーのテイン・セイン大統領は、民主化を進めてきたが、改憲や少数民族の人権保護等まだやるべきことは多く、米国は、民主化の度合いに応じた段階的制裁解除を行なうべきである、と主張しています。

 すなわち、ミャンマーの大統領がホワイトハウスを訪問するのは、1966年以来、初めてである。この約半世紀の間、5000万人の人口を有するミャンマーは、軍事政権による抑圧的な悪政で、貧困に陥っていた。しかし、この2年間、テイン・セイン大統領は、政治犯を釈放し、検閲を緩め、外国からの投資を歓迎してきた。そして、彼は、2015年の議会選挙を、初めて民主的に行なうことを約束した。

 オバマ大統領は、首脳会談後、「過去2年余り、アウンサンスーチー女史を含む政治犯が条件付きで釈放され、政治参加も出来るようになり、ミャンマーの民主化は着実な歩みを見せた。しかし、まだやることは多い」と述べた。

 テイン・セイン大統領は、アウンサンスーチー女史が大統領選挙に出馬できるように憲法を改正するかと聞かれると、言及を避けた。以前約束した国連人権高等弁務官の事務所開設にも、慎重姿勢を示した。テイン・セイン大統領は、軍人が重要な政治的役割を担うことに賛成で、彼は、軍部が支配する国家防衛安全保障会議を通して、集団で意思決定すると述べた。また、ミャンマーで大多数を占める仏教徒が、民族浄化と暴力のターゲットにしているイスラム少数民族のロヒンガについて聞かれると、テイン・セイン大統領は、その存在を否定した。

 米国にとっての課題は、ミャンマーの改革を推進させる最善策は何かということである。オバマ大統領は、首脳会談や貿易協定の署名等、アメに頼っているが、下院議員の中には、それに懸念を示す者もいる。第1期オバマ政権では、「行動に伴う行動」政策を適用して、ミャンマーの民主化の進む度合いに応じて、漸進的に制裁を緩和してきた。ミャンマーは良い方向に向かっているが、主要な問題は残ったままであり、今のやり方では、改革に対する米国の梃子を失いかねない。米機会では、ミャンマーの自由と民主主義法案が再提出された。それは、幾つかの制裁をもう1年延長しようとするものである。議会におけるこのような懸念は当然のことである、と述べています。

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 上記のワシントン・ポスト紙社説に見るように、一般的に、米国の論調は、ミャンマーの軍事政権に対して厳しく、アウンサンスーチー女史への期待が大きくなっています。民主化は善、軍事政権は悪、との単純化した構図です。しかし、ミャンマーの政治・社会は、より複雑です。少数民族問題も、市民権を与えれば安定化するというものでもなさそうです。


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