「トランプの影響力低下」の兆し
これに対して、MAGA系議員であるジム・ジョーダン下院議員(中西部オハイオ州)は、マッカーシー氏支持の演説をした。20年米大統領選挙の結果に異議を唱え、陰謀論者と見られているMAGA系のマージョリ―・テイラー・グリーン下院議員(南部ジョージア州)も、マッカーシー氏支持に回った。
トランプ前大統領は、SNSを通じてマッカーシー氏の下院議長選出を呼び掛けたが、MAGA系議員同士の対立は深まるばかりだった。米紙ワシントン・ポストの記者でトランプ前政権を取材したアシュリー・パーカー記者とジョシュ・デージー記者は、トランプ氏の影響力が徐々に弱まっている兆候であるとみている。
確かに、その通りだろう。22年中間選挙の上院選において、激戦6州(東部ペンシルべニア州、中西部オハイオ州、南部ノースカロライナ州、ジョージア州、西部アリゾナ州、ネバダ州)で、トランプ前大統領が推薦した4人の候補が敗れた。これも、トランプ氏の影響力が衰えている兆しであった。
なぜ「MAGA対MAGA」なのか?
米FOXニュースの保守派政治コメンテーターで、トランプ前大統領の強力な応援団であるタッカー・カールソン氏は、自身の政治トーク番組で、MAGA系の造反議員は、マッカーシー氏の保守主義は十分ではないと見ていると説明した。つまり、彼らはマッカーシー氏を穏健派寄りだと捉えているのだ。
また、カールソン氏は22年米中間選挙の結果に言及し、造反議員の行動に理解を示した。前回の中間選挙では、共和党の圧勝が期待されていたが、「赤い波(赤は共和党のシンボルカラー)」は起きなかった。共和党は上院で、民主党から多数派を奪回できず、下院では多数派を奪ったが僅差であった。
カールソン氏は、この中間選挙の結果に「失望した」と述べた上で、「上院院内総務はマコネル、下院議長はマッカーシー、共和党全国委員会委員長はマクダニエルで本当に良いのか」と、疑問を投げかけた。さらに、「誰も罰せられない。同じ人物がリーダーの職に就いている。責任を共有するべきである」と強い口調で述べ、「これは民主主義ではない」と言い切った。
カールソン氏は、マッカーシー氏のリーダーシップを批判するMAGA系造反議員を代弁した。ただ、カールソン氏、MAGA系造反議員およびマッカーシー氏支持のMAGA系議員は、中間選挙の責任をトランプ前大統領に求めていない。