2023年2月5日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年1月13日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 渡邊理事長は、腎臓病は腎臓と腸管の「腸腎連関」が密接に関わっていることに着目。腎臓の障害により老廃物や毒素が体内に蓄積してしまう尿毒症になると、腸内細菌が乱れてしまい、腎毒素が増えるということを発見した。この負のスパイラルが続くことによって腎臓が痛めつけられ腎臓病の症状が悪化する。

 そこで玄米成分が腸の環境を整えるという経験則から2年間研究を続けた。過剰なたんぱく質やカリウム、リンの摂取は腎臓病に良くないことから、そうした成分を減らしながら玄米が持つ食物繊維やコレステロールや脂質を低下させるガンマーオリザノール、抗酸化機能を残すことに成功した。

 食べ続けると腸内で酢酸を出す菌が増えて悪玉菌の増加を抑制する。善玉菌が増えて腸内免疫を正すという役割も果たすようになる。「主食をこの低たんぱく加工玄米に変えるだけで腎臓病患者の尿タンパクが半分になる。悪い方向に走っていた列車を良い方向へと切り替えるイメージ」と渡邊理事長は表現する。

 主食を低たんぱく加工玄米に置き換えるだけの無理のない食事療法を続けられることが大きなメリット。おかずは変えなくてもたんぱく質摂取を10グラム減らせられる。実際にこの低たんぱく加工玄米を食べた腎臓病患者から「我慢して食べるという感じがなく、美味しくたんぱく質を抑えられるのでうれしい」といった声が寄せられている。

世界も注目するコメの価値

 これまで玄米食が便通改善など身体に良いことは知られていたが、その機能性は科学的なエビデンスとして証明されていなかった。協会は低たんぱく加工玄米により腸腎連関を正すことで腎臓病の進行を抑えられることを立証しつつあり、特許申請を進めている。

 この研究開発は注目されていて、内閣府が主導する官民研究開発投資拡大プログラム「プリズム計画」に、農林水産分野で唯一採用され、1億2000万円の予算が付いている。また、パリで開催された食品と健康をテーマにした国際学会で発表したところ、英国の透析センターの教授から「いつ手に入るのか」と質問があったほか、イスラエルで開催された日本館パビリオンに出展した際にも大きな反響があったという。

 協会は低たんぱく加工玄米開発・普及事業を「臨床試験」、「基礎研究」、「製造工程の発展」、「JASの普及と輸出」「原料米確保」の5つのモジュールで進行させている。臨床試験や基礎研究においては、産学連携として東京農業大学に研究室を設置、大手コメ卸の神明が資金面を支援する。製造工程の発展では、バイオテックジャパンと大手精米機メーカーのサタケ、海外は大手米菓メーカーの亀田製菓といったコメ業界を代表するような企業が名を連ねている。

 「JASの普及と輸出」については、すでに臨床試験を行い、製造工程管理JAS(日本農林規格)を取得。JASを国際標準化して海外に普及すべく川崎医科大学の柏原直樹教授を中心に国際学会を開催する準備を進めている。

 その背景には、慢性腎臓病患者が中国に1億3230万人、インドに1億1510万人もいる現実がある。こうしたアジア諸国はコメを主食としており、低たんぱく加工玄米による食事療法に適するため、関心も高いのだ。


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