2024年5月20日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月6日

Hwangdaesung/Gettyimages

 2023年1月19日付のワシントン・ポスト紙(WP)に、同紙コラムニストのデイヴィッド・イグネイシャスが、「習近平の路線訂正は、圧力を受けている機敏な独裁者の姿を示す」との論説を寄せ、習近平の政策転換と習近平論を書いている。

 昨年12月、習は新型コロナウイルス対策および経済・技術政策の主要部分の驚くべき転換を発表した。しかし、習は説明も陳謝もしなかった。これは彼の戦術的機敏さと恥知らずさを示した。

 習の最近の方向転換を豪州の元首相で中国専門家のケヴィン・ラッドが長を務める米アジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)が検討した。最も劇的な変更は「ゼロコロナ政策」の逆転である。10月の党大会で習はロックダウン戦略を成功例としたが、その2カ月後、習は間違いを認めた。ゼロコロナ対策で人々の不安は増大し、11月末には抗議者が白い紙をもって北京と上海の街頭に出た。ASPIは、「党は驚いたように見える。2週間、抗議者を統制するのに、どの程度の抑圧が許されるべきかについて決定がない状況が続いた」と書いている。

 何の公的説明もなしに、習は12月8日に路線転換した。中国の衛生当局は自動的ロックダウン、強制的検査、厳格な旅行・隔離規則の終了を発表した。明らかに習は、ロックダウンがウイルスを止めるのに失敗し、経済を凍結し、国の指導者としての彼の正統性を危険に晒していることを理解した。

 習は次に、中国の企業家の士気を落とし、ITおよび不動産セクターを弱体化したネオ毛沢東主義の経済政策を変更した。ASPI は 12 月の中央経済作業会議の報告は前年のものから変化していると指摘した。新たな報告は、「イデオロギーがより少なく」「市場の活力と創造性」を支持した。習が成功したビジネスを攻撃するために使った用語、「共同富裕」への言及はなくなった。ASPI は 2017 年以降、習は「私的セクターを制約し、国家を徐々に前進させてきた」と指摘する。12月、習はその路線を逆転させた。

 教訓は何か。第 1 に習は機敏な独裁者で、断崖のふちに近づいたときには自己保存の感覚が先月のように働いてくるということが明らかになったことである。第 2 に習の警察国家中国においても、中国人は「民衆の力」を行使しうることである。最後に習が予想不可能であることである。

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 このイグネイシャスの論説は、現在中国で起きていることを的確に指摘していると思われる。ゼロコロナ政策の撤回、経済政策における手直しが、十分な説明もなく行われている。

 ゼロコロナ政策の緩和をする必要は理解できるが、コロナ感染予防対策をほとんど撤廃するようなことは極端なやり方である。中国政府は、春節の休暇中の帰省や旅行で、延べ約21億人が移動すると予測している。医療体制が弱い農村地帯等で感染が広がった場合は、かなり恐ろしいことになりかねないだろう。

 日本は中国人に対する水際対策を強化しているが、当然の対応である。


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