2024年4月29日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月31日

studio-laska/Gettyimages

 1月17日付の英フィナンシャルタイムズ紙(FT)に、FTのEleanor Olcott在香港中国特派員とSun Yu中国経済担当レポーターが 「中国の人口が歴史的変化の減少になる。60年で最初の減少は国内および世界経済に長期的な影響を持つ」との記事を書いている。

 2022年、中国の人口は数十年で初めて減少した。中国は世界最大の人口を有する国家として、長い間、中国と世界の成長を支える労働力と需要の重要な源であった。2023年1月 17日、中国の国家統計局は、全人口が60年ぶりに2022年に85万人減り、14億1175万人になったと発表した。

 中国のゼロコロナ政策が出生率の減少を加速させたと見られている。昨年、出生数は956 万になり、一昨年の1062万を下回った。2022年の出生率は70年以上前に記録がとられるようになってから最低で、1000人当たり6.77人であった(2019年は10.41人)。

 国家統計局長は、15歳から49歳の出産可能年齢の婦人の数が100万以上減ったと述べた。赤ちゃん商品や産科関連株はこの発表で売られ、8.5~11%も値下がりした。

 この人口減少は1980年に課された一人子政策に根を持つ。当局はこの政策を2016 年に撤廃したが、その後も出生数は減りつづけている。2022年の死亡率は1000人当たり7.37人で 1970年代以降最大であった。

 中国のゼロコロナ政策の先月の突然の廃止とその後の感染増は病院を急速に逼迫させた。中国の人口上の転換点は、日本(2010年より人口が減り始め、その後毎年減り続けている)と同じ道筋に中国を置いている。

 国連は中国の人口は 2050 年までに13.1 億人に、世紀末には7.67億人になると予想している。インドの人口は今14億660万人で、今年インドが中国を追い抜き世界第一になるとされる。

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 2022年に中国の人口が減り始めるという事は予想されていたことである。が、実際に起きてみると、それは世界経済、世界政治にとり大きなニュースになった。日本も少子高齢化に悩んでいるが、中国の場合その悩みはさらに大きなものになるだろうと考えている。

 第一に、2021年の特殊合計出産率は日本は1.33であるが、中国は1.15であり、日本より低い。ちなみに韓国は1.0以下であり、さらに低い。

 第二に、儒教の影響力が強い中国と韓国には女子より男子を優先する傾向があり、1人しか子供を持てないとなると女子は中絶し男子を生む傾向が出てくる。韓国の小学校を見学してみると、運動場で整列している子供は、男子の列の方が女子の列よりずっと長いことが多いようだ。中国でも同じ傾向があると聞いた。

 要するに、人口が男子に偏り、結婚相手たる女子が不足することがある。ベトナムから女子が中国側にさらわれたというような話があるが、そんなことで是正される問題ではない。問題の規模が違う。さらに婚外子に対する差別感情が強いように思われる。


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