2024年5月6日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年2月13日

高騰続ける肥料を自給するための視点

 まず、「1 食料安全保障構造転換対策(過度な輸入依存からの脱却に向けた構造的な課題への対応)」の「(1)生産資材の国内代替転換等」では、食料生産に不可欠な肥料、飼料等を、国内資源の活用等へ大きく転換することを提言している。

 具体的には、「堆肥・下水汚泥資源の肥料利用拡大、堆肥等の広域流通、肥料原料の備蓄等(2030年までに化学肥料20%減、肥料資源の国産割合40%へ、耕畜連携による国産飼料の供給・利用拡大)など」を挙げている。 

 肥料の国内資源活用について、まずやらなければならないのは、土壌調査である。その土壌にとって何がどれだけ足らないのか、肥料成分過剰になってはいないか、施用方法は正しく節約的かなどをしっかり調べなければならない。

 次に下水汚泥だが、確かに、リンの国内需要量の2割、30万トンのポテンシャルがあり、下水道を所管する地方公共団体が実用化を図っている。問題は、重金属や有効成分の安定性である。利用者の立場に立った推進対策が不可欠であろう。付け加えれば、今後は、窒素肥料(N)についても、脱炭素・カーボンニュートラルとの関係で国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)グラスゴー会議でも話題となったアンモニア発電と競合した争奪戦が予想される。

 堆肥については、有効性、利便性に優れて、広域流通を可能とする「売れる堆肥」でなければならない。また、<畜産‐耕種>の「循環」の観点からの流通・利用体制を整備する必要がある。単なる自家消費の延長ではない。

 これは耕畜連携とも関連するが、問題は耕種側からの押し付け・強制であってはならない。コメの生産場所としての水田が余っているから畑に転換して輸入飼料穀物のトウモロコシに変えたらいいというような単純なことではない。

 畜産の在り方の根本に立ち返る必要がある。例えば、反すう家畜の牛が好んで食べ、生理的にも栄養的にも優れた飼料供給を考えることが肝要である。

 そこには、地域資源の総合的、有効的な活用の視点が不可欠である。土地利用の面から言えば、林地、遊休農地などに存在する雑草も家畜は食べるため、一方では飼料資源となり、もう一方では草刈りの役割を果たす。地域内で循環を再構築することになるのだ。さらには、霜降りから赤身という新たな肉の嗜好や、健康、調理などにも配慮した消費者、料理人との相互交通もしていなければ意味がない。

 テレビ番組の「ポツンと一軒家」で紹介された北海道様似町の駒谷牧場の「ジ(地)ビーフ」、長野県小谷村で豚熱の流行前まで進められていた「放牧豚・北アルプス野豚」は、耕畜連携と地域循環をコンセプトにしたものである。アニマルウエルフェアと地域支援型農業(CSA)を意識した形態は、世界の潮流ではないだろうか。

 いずれにせよ、「農業のグリーン化」で掲げる有機農業面積25%目標は、欧州連合(EU)の一部の国ではすでに実現しているのに対し、日本の現状は1%にも満たない。道のりは極めて厳しい。


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