社員の健康課題解決は組織としてもメリットに
こうした企業による女性社員の健康課題へのアプローチの必要性について、労働経済学を専門とする慶應義塾大学商学部の山本勲教授は「健康は個人に帰属するものだが、雇用の流動性が低い日本企業においては、組織としての健康投資が生産性の向上に直結するだけでなく、人材の多様化や定着によって企業価値の向上にもつながる」と指摘する。
女性の健康に資する取り組みは「女性の優遇」でも「男性にしわ寄せがいく仕組み」でもない。労働人口が減少し、既存の労働力の活用が求められる中、共に働く女性が本来の能力を発揮できれば、それは男性にとっても企業にとってもプラスになる。
フェムテックの黎明は日本企業がこれまで顕在化できなかった女性たちの〝困り事〟を認識するきっかけになる。男女問わず誰もが生き生きと働き続けるために、困っている人が「離職・離脱」や「諦め」以外の選択肢を持てるような環境を整えていくことが必要なのではないだろうか。