2024年11月25日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年2月23日

 腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)はトランスペアレンシー・インターナショナルが作成しているもので、世界各地の公務員と政治家がどの程度汚職していると認識できるかという指標である。この指数は、毎年ほぼ10の機関が調査した13種類のアンケート調査から作成している。10の機関とは、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、ベルテルスマン基金、世界銀行、エコノミストインテリジェンスユニットなどである。

 調査対象は、世界中のビジネスマンと政府の分析専門家などである。調査対象に「一般市民」ではなく、ビジネスマンや専門家を選んでいるのは、彼らが、いわゆる小口の汚職・腐敗よりも、政治資金、談合など大口の腐敗を、より熟知しているからである。

 数が大きいほど腐敗が少ない。こちらは、ドイツ9位、日本と英国18位、フランス21位、米国24位、台湾25位、韓国31位、イタリア41位、中国65位、ロシア137位である。

 民主主義と腐敗と豊かさの東欧諸国における関係性は、原田泰『プーチンの失敗と民主主義国の強さ』(第8章、PHP新書、2022年)で解説しているが、ここでは全世界に広げて説明したい。

 図1は、2022年の民主主義指数と1人当たり購買力平価国内総生産(GDP)との関係を示したものである。縦軸が1人当たり購買力平価GDP、横軸が民主主義指数である。図から明らかなように、民主主義の度合いが高い国ほど豊かな傾向がある。

 民主主義の度合いが低くても豊かな国は、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、サウジアラビア、クウェート、オマーンなどの産油国ばかりである。これらの国を除けば、民主主義と豊かさの関係はより明瞭になる。

 もちろん、この関係は因果関係が逆であるという議論もある。すなわち、豊かな国だから民主主義を採用するのであって、貧しい国は採用できないと言う。確かに、民主主義指数が6以下の国では豊かさと民主主義の関係がないように見える。独裁、または独裁と民主主義の混合体制と言われている国である。

 6以下の国は1人当たり実質購買力平価GDPが2万ドル以下、多くは1万ドル以下の国である。図1の結果は、1万ドル以上の国になって、徐々に民主化が進むのだとも解釈できる。

 実際、民主主義と豊かさに関する初期の文献では、豊かさが民主主義をもたらすと解釈されることが多かった。かつて、中国も豊かになるにつれて自由と民主主義の制度を取り入れ、普通の国になると議論されていたことを思い出して欲しい。こちらは豊かさが自由と民主主義を生むという議論の一つの応用である。しかし、この応用は、今のところは間違いであるようだ。

腐敗が少なければ豊かになれる

 筆者は、因果関係は、民主主義が豊かさを生むという方向だと思う。それを示すのが、腐敗と豊かさの関係を示す図2である。図に見るように、腐敗が少ないほど(数字が大きいことが腐敗の少ないことを示す)豊かになる傾向がある。両者の関係を示す決定係数も高くなる。

 なぜ腐敗が少ないほど豊かになるかと言えば、腐敗があれば政府の支出の何割かは賄賂に使われる。必要な支出ではなく、賄賂を払ってくれる支出に向かう。さまざまな許認可が賄賂次第となる。

 日本は腐敗の程度は少ないが、それでも電通は談合の要となってオリンピックから利益を得ていた。スポーツイベントは、コスト高になっていたはずだ。


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