2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月25日

 米Foreign Affairs誌2013/年7-8月号で、Andrew J. Tabler米ワシントン近東政策研究所上席研究員は、シリアの内戦の混乱を放置するのは最悪の選択肢であり、米国と反政府勢力との間に強固な関係を築くことが、シリア問題を収拾し、この地域での米国の影響力を維持するために必要である、と述べています。

 すなわち、シリア情勢をこのまま放置するわけにはいかないが、アメリカはもうイラクのような介入をする意思はない。

 アメリカが最低できることは、まず、毒ガスなど大量殺傷兵器を使わせないことである。もし、アサド大統領が言うことを聞かないようならば、無人機などによるピンポイント攻撃も考えるべきである。

 次は、反乱軍支配地域に対する、政府側からの空爆を防ぐことである。ヨルダン、トルコ国境から50-80マイルの地域に、飛行禁止区域を設定する。

 第三には、反乱側の中で、過激派でない勢力に、試行錯誤で、武器を供給してみることである。

 米国は、早急に南トルコと北ヨルダンに事務所を設け、シリア反乱側と連絡すべきである。

 こういう形でアメリカが関与してこそ、反乱側がアルカイダ等の過激派中心となることを防ぎ、現在反乱側の主要勢力である、世俗派、穏健イスラミストを核とすることができる。

 その上で、アメリカは政府側と反乱側との対話を促進することができる。最終目的は、アサド大統領の退陣とシリアを民主的国家として再統一することにある。

 それは必ずしもうまく行くとは限らない。しかし、大事なことは、米国が、亡命者だけを相手にせずに、現にシリアに存在する勢力を強化することである。何もしないのは最悪の選択である。シリアの国内勢力と強い関係を持つことによって、米国は、米国及びその同盟国の利益、そしてシリア国民の将来に貢献できる、と論じています。

 * * *

 まず、論文の内容よりも、オバマ第2期政権がシリア介入について慎重な姿勢を取っている最中に、Foreign Affairs誌がこのような論文を掲げたこと自体が注目に値します。新たにオバマ大統領の国家安全保障補佐官となった、スーザン・ライス、その後任の国連大使サマンサ・パワーが、人権論者で、人道的介入論者として知られているのでなおさらです。


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