2024年5月9日(木)

Wedge REPORT

2013年7月23日

参議院の存在意義と改革の必要性

 これまで見てきたように、われわれの代表を選ぶことと投票率の高低の間には関係がない。それよりも、国民の多様な意見をなるべく多く国民の代表で構成される国会へ届けられるかがより重要である。つまり、そのために、(1)いかなる代表原理を採用するのか(つまり、国民のどの属性を代表するのか)、そして、(2)その代表原理と整合的な選挙制度は何か、が問題にされなくてはならないのだ。投票率の高低は副次的なものでしかない。

 近年、参議院について衆議院のカーボンコピーであり、不要であるという参院不要論が勢いづいている。しかも、こうした声は一票の格差是正論によって強化されている。なぜなら、衆参両院で一票の価値の平等を厳密に追い求めようとすれば、衆参で代表原理及びそれを支える選挙制度が同一のものとならざるをえないからだ。要すれば、一票の格差是正は一院制を希求することになる。

 列国議会同盟の資料を見ると、2010年には、議会を有する187カ国のうち75カ国、4割が二院制を、残りの112か国6割が一院制を採用している。このことから、一院制が主流のように見えるが、実際には、20年前と比べると、二院制採用国のウェイトは10%ポイント程度増加しているし、経済開発協力機構(OECD)加盟国のうち、人口が5,000万人を超える場合にはすべて二院制となっている。世界の潮流から見ると、必ずしも上院廃止論が支配的なわけではない。これは人口規模が大きくなると、国民の多様性が増すためであると考えられる。

 したがって、日本においても、国民の多様な意見や利害関係を多層的にかつ慎重に国政に反映させるため、二院制を維持するほうが賢明であると考える。ただし、その場合、衆議院との役割分担は欠かせない。つまり、衆参で代表原理と選挙制度を異ならせる必要がある。例えば、衆院では居所での差別を否定し厳密な一票の価値の平等を追求する一方で、参院では一票の価値の不平等を認め、都道府県代表や世代代表等、日本の懸案を大所大局からじっくり検討できる参議院にすることが重要である。

改革実行のラストチャンス

 今回の参院選の結果、実質的には6年振りに衆参における過半数勢力の与野党の逆転が解消された。しかも衆院を任期途中で解散しない限り、3年間国政選挙がない。これはチャンスだ。そして今回上手く行かなければまたねじれ国会に直面することになるという点で、改革実行のためのラストチャンスでもある。

 但し、国民や利害関係者・団体の声を聞くのに1年、改革案を作るのに1年、国会で審議し成立させるのに1年かかるとすれば、政府・与党に与えられた時間はギリギリだ。

 タイムリミットである2016年までの3年間を天佑として、これまでの歴代政権が成し遂げることができなかった財政再建、社会保障制度改革、規制緩和等の中長期的な課題解決に一気に目処をつけて貰いたい。

 昨年の衆院選、21日の参院選を通じて、政権与党は圧倒的な支持を集めた訳だが、これは必ずしも国民からの白紙委任を意味しない。国民の声に謙虚に耳を傾けつつ、大胆なリーダーシップを発揮して難題を一掃するという相反する要請に応えることができれば、日本を立て直した名宰相として歴史に名を残すことになるだろうし、その条件は整った。

 投票した国民もしなかった国民も選挙という儀式を通して厳粛な信託を行ったわけであるから、今後の政策運営に関して政治家と連帯責任を負うとともに、その動向を注意深く見守っていく必要があるだろう。

[特集] どうすれば良くなる?日本の政治


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