2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2013年7月23日

 次に、(2)支持政党/支持候補者であるが、一般的に、有権者全員の支持政党が決まっていたり、支持候補者が決まっていれば(熱烈なファン的存在)、争点の大きさ・有無にかかわらず投票率が高くなる。しかし、無党派層や支持候補者を決めていない層が多ければ争点や天候等が影響することとなり、先に述べた今回選挙における争点の絞り難さなどと相まって、投票率を引き下げた。

 (3)政策の違いは、すなわち政策への期待とも言える。一般的に、各政党/候補者の間で政策の違いが大きければ大きいほど、そして国民の間で選好が異なるほど、投票率は高くなるからだ。しかし、今回の各党の公約、マニフェスト等を見る限り、主要政党間で大きな違いが見られず、その意味ではどの政党、候補者に投票しても結果が変わらないように感じられたため、投票率を引き下げた。

 次に、(4)一票の価値、つまり選挙結果に対する影響力の大きさであるが、投票前から頻繁に報じられている世論調査の結果や選挙予想等から、大体の選挙結果の傾向が共有され、自分の一票の価値が軽くなってしまったと感じられ、投票に行く気を減じてしまった。

 最後に、(5)投票のコストであるが、投票日が夏休み最初の日曜日ということや、好天ということもあり、投票に行くコストが高くなった。つまり、多くの国民にとっては、レジャーの誘惑に抗うだけの意義を見出だせなかったとも言えよう。

 以上の要因が複雑に絡み合った結果、今回の参院選の投票率は低くなったと考えられる。

政権与党への業績評価
「業績投票モデル」

 それではこうした低投票率の中で与党が大勝した理由はなんであろうか。これについて考えるには、業績投票モデルが適している。

第23回参議院選挙が21日投開票され、自民党は選挙区、比例区ともに順調に議席を伸ばし、大勝した。公明党と合わせ全議席の過半数を獲得し、衆参両院の「ねじれ」は3年ぶりに解消された。当選確実の候補者名に花を付ける安倍晋三首相=2013年7月21日午後、東京都千代田区の自民党本部・開票センターで (写真:東洋経済/アフロ)

 この考え方では、有権者が現政権の業績を高く評価すれば与党に投票し、低ければ野党に投票するとされる。実際、近年の参院選の場合、与党の政策に対する業績評価の側面が次第に大きくなりつつあると考えられている。いわゆる政権与党の政権運営への中間評価である。例えば、平成19年の第21回通常選挙では第一次安倍政権下での閣僚不祥事や消えた年金問題に対して、平成22年の第22回通常選挙では鳴り物入りで政権交代を果たした民主党政権の政策運営のまずさに対して、それぞれ厳しい評価が下されている。

 今回は景気・雇用にプライオリティを置く国民がアベノミクスを高く評価した結果、政権与党が多くの票を獲得したと考えられる。つまり、結果論で言うと、国民の一定割合が安倍政権の政策方針に対して「可」と判断したのだ。


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