とすれば、45年に高齢世代となった私たちが給付をあきらめるほかなく、この場合、現在の高齢世代が受け取っている給付額の0.65倍とならざるを得ず、つまり35%給付水準が落ち込む計算だ。
以上から、今回の将来人口推計は外国人の流入により現役世代の落ち込みがやや緩和される一方、平均寿命の延長などにより高齢者が増加することもあり、年金財政に与える影響は前回推計と比べてもそれほど大差ないとの結論が得られそうだ。
すべては財政検証のため?
しかし、これは、あくまでも外国人頼みの脆弱な予想の上に成り立つ点を忘れてはなるまい。将来人口推計が公表される2日前の4月24日、政府は外国人労働者の在留期間の更新に制限のない「2号」の対象分野を、現在の2分野から11分野へと大幅に拡大する方針を打ち出している。
来年は、この将来人口推計をもとに5年に1度の年金制度の定期健康診断である年金将来の公的年金の財政見通し(財政検証)が行われる。日本の公的年金制度は実質的にはねずみ講であり、年金制度を支える現役世代の減少に連動して年金給付額も減る仕組みとなっていることから、いわゆる「100年安心プラン」を守るため、日本人が減る分を外国人で穴埋めする必要があったとも邪推できる。
残念ながら、日本の人口減少を確実に反転させる術は存在しない。現役世代が減り続ける中で、経済・社会を維持し、高齢者を支えていくためには、人口減少を受け入れ、それを前提としても持続可能な経済・社会の構築こそ急務だ。
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