2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2023年5月6日

 ウクライナ軍は今回の戦争で、旧ソ連製の改良型攻撃用ドローン「Стриж」(ストリーシュ Tu-141)を度々用いている。このドローンの最大の特徴はスピードで最高速度は時速1100キロメートルにも達し、露軍の迎撃を困難にしている。

 しかし、今回の飛行物体は「Стриж」に比べると、非常に速度が遅い。メドゥーサによれば、複数の映像の検証から、飛行速度は「Стриж」の10分の1程度の時速110キロメートル前後ではないかと推察している。

 そして、仮にこの飛行物体がウ側が保有する兵器であれば、自国開発されたドローン「UJ-22 Airborne」が考えられるという。20キログラムほどまでの爆薬を積むことが可能で、航続距離は800キロメートルにまで及ぶ。最短距離でウクライナ国境からクレムリンまで約500キロメートルで、物理的には射程範囲内にある。

 事実、露国防省は今年に入り、このUJ-22 Airborneがロシア国内で複数回、撃墜されたと報告している。

ウクライナ軍によるものなのか?

 一方で独紙ビルドは調査の結果、ウクライナ側から発射されたUJ-22 Airborneが4月下旬、プーチン大統領が訪問する予定だったモスクワ近郊の工業団地の手前で墜落したと伝えた。

 また、ウクライナのメディア・ウニアンは5日、「ウクライナがドローンの支援によって攻撃」したロシア国内の地点を示す地図を公開した。それによると、攻撃地点はロシア国境沿いやモスクワ近郊に集中しているのがわかる。

 こうした事実関係から、一つ目の説としてウクライナ正規軍の犯行かどうかを検証したい。

 爆発事件を受け、フィンランドを訪れていたゼレンスキー大統領は「われわれはプーチン大統領やモスクワを攻撃しない。自らの領土で戦う」と全否定した。

 確かに、ウクライナ南部・東部の領土奪還を目指す反転攻勢開始を前に、たった2機のドローンでクレムリンを狙うには、その合理的な理由や達成目標は何なのかを見出だしにくい。しかし、先のウニアンの報道をみる限り、モスクワ近郊のドローン攻撃が頻繁に起こっているとみられるため、ウクライナ軍の攻撃の可能性がゼロとは言い切れないだろう。

 そもそも、ゼレンスキー政権はこれまでも、越境攻撃をしたとしても、自らの軍事行動であるとはっきりと認めていないケースも多々あるとみられる。

 米機密文書の流出を端緒にして米紙ワシントン・ポストが、今年2月24日にウクライナ軍がモスクワを含めた内陸部深くへの攻撃を計画していたと報じたが、その際もポドリャク大統領府長官顧問がSNS上で「この攻撃がわれわれに必要なのか。このような一回だけの行動で何が解決できるのか。戦争の行方を変えられるのか」と否定的な見方を示している。

 果たして、米機密情報を端緒にしたとみられるワシントン・ポストの報道をフェイクニュースと言い切れるだろうか?

 一方で、まったく逆サイドの見方だが、西側からの最新兵器の供与を得て戦力を増強しているウクライナ軍の動きにあわせ、ロシア軍の防空システムも当然のように強化されているはずで、低速ドローンがクレムリンにたどり着くまで撃墜される可能性は高いだろう。


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