2024年4月20日(土)

WEDGE SPECIAL OPINION

2023年4月25日

ロシアによるウクライナ侵攻は、ソ連の占領を経験したバルト三国にとって「繰り返してはならない歴史」だった。一貫してロシアの脅威を訴えていたバルト三国。だが、主要国にその声は届かなかったとの思いが滲む。フランスやドイツなど大国の〝声〟は日本のメディアでも報じられるが、彼らのような小国の〝声〟が取り上げられる機会は少ない。バルト三国は今、何を思うのか、駐日大使たちに聞いた。
聞き手・古谷知之、取材協力・増永真悟、構成・編集部(大城慶吾、野川隆輝)
CARL COURT/GETTYIMAGES
取材協力・増永真悟( Shingo Masunaga)慶應義塾大学SFC研究所 上席研究員
エストニア・タリン大学大学院で修士号(国際関係論)取得。2021年、フィンランド・トゥルク大学大学院で博士号(東アジア学)取得。同年より現職。専門は戦間期の北欧諸国における日本の諜報活動史。

古谷 日本は安保関連三文書を改訂し、防衛生産基盤強化に乗り出した。エストニアは日本に何を期待するか。

古谷知之 (Tomoyuki Furutani) 慶應義塾大学総合政策学部 教授 慶應義塾大学総合政策学部卒、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2015年より現職。専門は先端モビリティー(ドローンなど)の社会実装、先端技術と安全保障、応用統計学、都市工学。

レイナルト まずは日本の決断を歓迎したい。日本はかつて、防衛装備・防衛技術に関する制限があり、海外のパートナーとの協力機会は比較的限られてきた。今後は日本における防衛関連のステークホルダーとエストニアを含む日本と志を同じくする国々のステークホルダーとの間に、新たな協力の機会が生まれることを祈っている。

 例えば、わが国の防衛・宇宙企業を代表する「エストニア防衛クラスタ(Defense Estonia Cluster)」(以下、DEC)という非営利団体は、研究開発分野で日本との協力に高い関心を持っている。DECはエストニア企業、研究開発機関とそれらの顧客からなる国際協力とエストニアの防衛産業の輸出などを目的としたネットワークだ。DECとその加盟者はエストニアの防衛産業の輸出などを目的として国際プロジェクトに参加している。また、イノベーターたちに対して、人的・経済的ネットワーク構築、研究開発、その他ビジネスにおける協力機会の全てのフェーズを通じて、個々の事情に応じたさまざまな支援を行っている。

 DECでは、サイバーセキュリティーや電子工学、ICT、光通信学、陸上・海洋におけるロボティクスにおけるデュアルユース能力の特定および促進のために、エストニアの国防省や内務省とも緊密に連携している。日本および日本と志を同じくする国々との間の国際防衛協力に関する制限が解かれようとしている現在、お互いに学ぶべき点が多々あると考えている。

ヴァイノ・レイナルト(Väino Reinart) 駐日エストニア大使 1962年エストニア生まれ。92年外務省入省後、一貫して外交畑を歩む。2007年に駐米大使、17年エストニアが欧州連合(EU)理事会議長国時代にEUの通商政策委員会議長を務めた。エストニア外務省通商・開発協力次官を経て、18年11月より現職。

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