古谷 エストニアの国防戦略の中で、ロボット化・自動化技術についてはどのように考えているのか。また、伝統的防衛産業や装備との連携で重視していることとは何か。
レイナルト ロボット化と自動化技術は、現代の防衛産業における研究開発に完全に結合されており、DECの活動もその一部となっている。AIやロボット化、またはサイバー空間に端を発する脅威の発見と排除も含め、「技術的進歩」を取り入れることはごく自然なことである。
一例を挙げれば、わが国で防衛・民生用向けの無人車両を製造しているミルレム・ロボティクス社は、政府やその他の民間企業と密接に協力しており、伝統的な防衛装備技術と無人車両という現代的アプローチの架け橋となっている。
サイバー分野などの新領域も考慮に入れなければならない。わが国の国防省は「ファウンデーションCR14」と呼ばれる組織を創設し、サイバーセキュリティー訓練やその有効性の実験・確認などを10年以上積み重ねている。現在、「サイバー」は伝統的な防衛産業ともつながっていることから、わが国ではサイバー空間における防衛にも力を入れている。
技術を軍用と民生用に
線引きすることは不可能
古谷 日本版のDARPA(編集部注:米国防総省の国防高等研究計画局)創設に向けてエストニアから日本が学べることはあるか。
レイナルト わが国は限られた資源しか持たない小国である。技術開発において、軍用と民生用との間に線引きをすることは不可能であり、またそう信じている。したがって、わが国の大学や研究機関は軍用・民生用問わず、興味がある日本の研究機関との協力に対してはオープンである。
古谷 海外からは、日本の科学技術に関する開発・調達の意思決定が遅いとの指摘もある。エストニアが意識していることは何か。
レイナルト われわれの根底にあるのは、約50年に及ぶソ連による占領の歴史だ。1991年に独立を回復したが、その時はさまざまな面で現代世界に対して後れを取っていた。われわれが50年間の国家発展の後れを取り戻し、世界に追いつくためには「スピード感」が必要だった。われわれは、全ての分野に対して十分な時間的余裕があると感じたことは一度もない。