2024年6月14日(金)

Wedge REPORT

2023年5月15日

TTDIの特徴と日本の評価

 TTDIは元々、世界経済フォーラムの「モビリティの未来を形作るためのプラットフォーム」が過去15年間、隔年で発表してきた旅行・観光競争力指数(Travel & Tourism Competitiveness Index:TTCI)を再設計したものである。TTDIとしては2021年度に発表したものが初版である。

 TTCIとTTDIの最も顕著な違いは、ビジネストラベルなどの非レジャー旅行に関する魅力度などの基準が追加されたことだ。「観光」を余暇としてのものだけでなく、ビジネスパーソンによる訪問や文化的な交流といったさまざまなものとして捉えるとともに、その国の観光事業が自然環境や社会インフラといった要素も含めて持続可能であるか、雇用創出など地域経済に寄与する産業となっているかといった、旅行業界が振興する方向性を考えることができる情報を提供することが目的である。

 TTDIのランキングは5のサブインデックスと17のピラー(柱)によって構成されている。各柱はそれぞれ4〜15の具体的な指標によって構成され、合計112の指標によって成り立っている。各指標は世界的に著名な研究者と連携し選定され、指標に用いられるデータは国連世界観光機関(UNWTO)や国際航空運送協会(IATA)、the World Travel & Tourism Council(WTTC)など国際機関の統計データが用いられている。

 TTDIの特徴は、観光客数や利用金額など調査時点のデータのみならず、ユネスコ世界自然・文化遺産数や地域分散度など、今後の可能性を鑑みるデータも取り入れられている点である。世界自然遺産には日本の「白神山地」と「屋久島」「知床」「小笠原諸島」「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」などが含まれることは皆さんもご存じだろう。日本の無形文化遺産は20件ほどあり、能楽、人形浄瑠璃文楽、(伝統的)歌舞伎、雅楽や秋保の田植踊なども含まれる。

 ユネスコのクリエィティブシテイにはデザインの神戸市、メディアアートの札幌市、映画の山形市など日本の11都市が存在する。こうした評価の背景には、日本の多様な文化資産がある。

 健康・衛生という柱はあるものの、新規感染者数などの新型コロナウイルス感染症に直接関係する指標は用いられていない。TTDIの詳細は図表を参照されたい。

図表:Travel & Tourism Development Index(TTDI)詳細 写真を拡大

 ここで確認したいのは、一部報道で強調された円安などの価格競争力は17の柱の一つでしかない点である。また、TTDIに用いられたデータは21年以前のものであり、昨今の急速な円安基調は反映していない。

 では、日本はどの点で評価され、世界ランキング1位となったのだろうか。アジア太平洋地域の国・地域と比較すると、「4.人的資源と労働市場」や「6.旅行・観光の優先度」は低い傾向にある。また「8.価格競争力」に関しても、ネパールやモンゴルなどの新興国と比較して高いとは言い難い。

 一方で日本が比較的評価されているのは「2.安心・安全」「3.健康・衛生」「9.航空輸送インフラ」「10.陸上・港湾インフラ」「12.自然資源」「13.文化資源」「16.社会経済的な回復力と状況」である。特に「3.健康・衛生」は新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降注目度が高く、かつ世界的に点数が高い国・地域と低い国・地域との差が激しいことから、日本が強みとして強調していける柱である。また、「12.自然資源」「13.文化資源」は国・地域が持つ自然環境や歴史的経緯に基づいており、これから整備、創出することが困難であることから、日本は強みとして強調していくべきだろう。


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