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2023年5月15日

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池上重輔 (いけがみ・じゅうすけ)

早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

早稲田大学商学部卒業。一橋大学経営学博士、ケンブリッジ大学経営大学院MBA、シェフィールド大学大学院国際関係学修士、ケント大学大学院国際関係学修士、シェフィールド大学大学院国際政治経済学修士。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、MARS JAPAN、ソフトバンクECホールディングス、ニッセイ・キャピタルを経て2016年より現職。東証一部上場企業の社外監査役、社外取締役を歴任。Academy of International Business (AIB) Japan country director。国際ビジネス研究学会(JAIBS)、日本マーケテイング学会、戦略研究学会の理事。著書に『日本のブルー・オーシャン戦略』(ファーストプレス)、『シチュエ―ショナル・ストラテジー』(中央経済社)、『インバウンド・ビジネス戦略』編著(日本経済新聞社)、『インバウンド・ルネッサンス』編著(日本経済新聞社)、『マーケテイング実践テキスト』編著(日本能率協会)等多数。

 このように、ランキングの順位のみに一喜一憂するのではなく、客観的指標を用いて日本の強みと弱みを把握するとともに、戦略的に注力していくべき競争優位を見出すことが重要である。ちなみに、現時点でTTDIの基準を満たす客観的な顧客満足度調査は無いので、TTDIには顧客満足度が入っていないことは認識しておいて欲しい。

世界からの評価を活かす三つのヒント

 こうした包括的で具体的な指標に基づいたランキングをいかに活用していくべきなのだろうか。

 一つ目は、プロモーションに活用することである。定性的な情報と定量的な情報を合わせて伝えることでその訴求力は強まる。

 日本全体や各地域の自然、歴史、特産物といった魅力の発信はもちろん重要であるが、世界のランキングで1位であることを加えれば、そのアピール力は倍増する。

 HPの冒頭に大きく載せて、客観的な評価が高いことを世界中の観光客に伝えてもよい。民間企業は何かのランキングで上位に乗ると、それをHPのトップページに目出つように掲載することがある。ちなみにビジネススクール業界にも外部評価があり、上位にランクされたスクールはほとんどの場合それを大きく掲載している。

 観光庁のHPは諸々の制約もあると思われるが、現時点で英語ページにTTDIで世界一になった表記は見られない。Travel Japan のような海外向けサイトは素敵な画像で魅力をアピールしているが、世界でも高評価というメッセージは見られない。もちろんこれはどのような戦略をもってマーケティングするかによるのだが、「世界一」という評価の活用を検討する余地はあるだろう。

 二つ目はこの項目を詳細に検討することで、何をどのような文脈で魅力的なものと見せるべきかを考察することである。ランキング指標の中で評価が高いものもあれば、低いものもある。評価が高いものを優先的にピックアップして、そうした要素を詰めた観光商品の開発に活用するのである。

 三つ目は改善の優先順位付けとその方向性の検討である。海外と比較し、劣位の項目は何なのか、どのように改善・強化するべきかを具体的に検討することが可能となる。優位な項目はどのようにその位置づけを維持するかも考えることができる。

 国全体としてではなく、自治体の施策など地域でこうしたランキングを活用する際には、項目自体を参考にすることから始めてよいだろう。観光の競争力はどのような項目で測定されているかを見ることで、自地域で何に優先順位をおくべきかを考えるヒントになるだろう。

  
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