処理水を取り巻く問題はもはや情報戦
韓国では今年3月、処理水を「汚染」とする背景に北朝鮮による情報工作があったことが報じられた。別件の反米集会や反尹錫悦政権デモで逮捕されていた、左派系政治団体幹部らの取り調べの中で明らかにしたという。
韓国主要紙朝鮮日報の報道によれば、北朝鮮は日韓関係の破壊を画策し、その手段として処理水への風評を煽動した。具体的には、「福島沖で奇形魚が出現」「奇形児出生」といったデマの大量流布や、環境運動家や海洋専門家をテレビ討論会に出演させて日本の「汚染水」放流が韓半島に及ぼす破局的災厄を論証させること、地方自治体長や国会議員も合流させた国際的な世論を集中させるための活動などを指示していた。
現在、処理水の海洋放出はIAEAが歓迎し、G7も支持を明言している。その一方で、中国、ロシア、北朝鮮は強硬に反対して妨害を続ける。3月21日にも、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は両国の包括的パートナー関係深化の共同声明で、福島の処理水海洋放出について改めて「深刻な懸念」を表明した。
いまや処理水を取り巻く問題の本質は「科学」ではない。世界平和アピール七人委員会の声明にあった文字通り『科学以外の判断原則に準拠して当面の行動を決める』、「政治」あるいは「情報戦」の様相を呈しているとさえ言えるだろう。