2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2013年8月16日

 こうした経済の逆回転が、贅沢品の消費にとどまっているなら、まだ良い。最大の問題は、中国経済のアキレス腱である金融システムを直撃するリスクが高まっている点にある。シャドーバンキングと呼ばれるノンバンクに矛盾は集中しているが、シャドーバンキングは「理財商品」と呼ばれる財テク商品と表裏の関係にあるだけに、事は厄介だ。

 理財商品とは一種の投資信託であり、銀行の窓口でも販売されている。銀行業監督管理委員会によれば、12年末の発行残高は7.1兆元。発行されている商品数は3・2万件にのぼる。残高全体のうち、個人投資家が62%に当たる4.4兆元を保有し、機関投資家の32%や富裕層の6%をはるかに上回っている。

 低利の銀行預金では飽き足らない一般大衆が理財商品の主な保有者なのだ。満期は1カ月未満から2年以上まであるが、「投資家は満期前の解約権を有しない」(野村総合研究所)のが、この商品の肝である。「銀行の窓口で売っていたから安心」と信じていた購入者は焦り始めている。

 理財商品の運用対象資産が焦げ付けば、資金の償還も覚束なくなるからだ。普通の投資家なら商品が満期を迎えた時点で現金に換え、継続投資など金輪際行わないはずだ。ならば、理財商品の満期はどの位の長さなのか。12年末時点でみると、期間1カ月以上3カ月未満が全体の60%、3カ月以上6カ月未満は22%となっている。

 向こう半年以内に全体の8割以上が満期を迎える勘定である。理財商品の資金の運用先であるシャドーバンキングは、資金の蛇口が急速に細っていくことが予想される。リーマン・ショックの1年前の07年8月に、米住宅ローンを基に組成した投資信託が解約停止に陥ったパリバ・ショックが再来するのではないか。そんな懸念がくすぶっている。

 英米のメディアに中国経済の「ハードランディング(剛着陸)」懸念が報道され始めたのも、このためだ。目端の利く米投資銀行、ゴールドマン・サックスは、保有していた中国工商銀行の株式をすべて手放した。危ない船から逃げ出したのだ。

日本は慌てる必要なし

 「中国経済がこけると相当な波紋が広がりかねない」。ちょっと前まで中国経済をヨイショしていたエコノミストの多くは、手のひらを返したようにそんな警戒論を唱えている。そうした懸念はどの程度妥当か。

 世界全体の経済成長に占める中国の割合(寄与率)をみると、リーマン・ショックが起き先進国が落ち込んだ08年には、実に39.5%に及んだ。10年と11年の寄与率はやや低下し、それぞれ18.1%、20.8%となっている。世界の成長の5分の1は中国のお蔭、といえる。その意味で、中国が一度に腰折れするような事態は、避けたいところである。


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