国内需要の喚起によって
外国人観光客を呼び込む
バカンスの文化は、国民一人ひとりの仕事に対するモチベーションや生産性を上げることに加えて、観光需要の面で大きな効果を生んでいる。バカンスの期間中、交通費や宿泊代などのために、フランス国民一人当たりが消費する金額は日本円で約20万円にものぼる。そのお金は高速道路などの交通インフラや長期宿泊に耐えうる観光インフラの整備を下支えし、さらには観光地の雇用を創出する。
こうしてバカンスによって生み出されたフランスの観光ツーリズムの文化と基盤は、海外からの観光需要を呼び込んだ。2020年の国際観光収入ランキングではフランスは米国についで世界2位。外国からの旅行者受け入れは年間4000万人の世界1位で2位のイタリアに1500万人近く差をつけているという。
「インバウンド観光の恩恵を受ける日本においても、同様の好循環を生み出すことができるのではないでしょうか。たとえば休暇が2週間あるなら、一度の旅行でも東北6県を全て回ろうか、京都や奈良市内の有名なお寺だけでなく市外に足を延ばしてみようか、といった選択肢が増えます。そうして国内需要が面で広がれば観光インフラも整備され、外国の人たちが日本で訪れたい場所や魅力がさらに増すでしょう」
働き方、家族と過ごす時間、人生との向き合い方、観光立国としての将来――。フランスの「バカンス」を通じて、さまざまな面において、日本の新たな可能性が見えてくる。『休暇のマネジメント』はそんな一冊だ。
最後に、高崎さんはこの本を執筆するに至った動機として、ある印象的な体験を語ってくれた。
「2週間の休暇中、南仏の浜辺で美しい海を眺め、私と同じようにバカンスを楽しむ色んな世代の人たちの様子を見回したときのことです。ふと目が合った女性が私に軽く笑いかけ、そして投げかけてくれた言葉に、心が震えました。フランスのバカンスの効能を表すのに、これ以上ふさわしい言葉はきっとないでしょう」
『人生は美しい。そう思わない?(ラヴィエバル、ネスパ?)』