ストルテンベレグ事務総長は「EUの加盟を目指すトルコの野心を支持する」とエルドアン氏の主張にエールを送ったが、今後、交渉が再開してもエルドアン氏が国内で権威主義体制を続ける限り、交渉が進展する見通しは小さいだろう。
〝プーチン離れ〟はホンモノか
エルドアン氏が転換した理由の中で見過ごすことができないのが〝プーチン離れ〟の側面だ。同氏はロシアのウクライナ侵攻を批判したものの、西側の対露制裁には加わらず、プーチン氏を「私の友人」と呼んで、親密な関係を続けてきた。
しかし、ロシアの民間軍事会社ワグネルの反乱以降、その姿勢に変化が出てきた。7月8日、昨年秋の捕虜交換後、トルコに滞在していたウクライナ軍の「アゾフ大隊」の司令官らがゼレンスキー大統領とともに帰国したが、ロシアとの合意では、戦争終結までトルコに留め置くという条件になっていた。
エルドアン氏はゼレンスキー大統領と会談した後、ウクライナがNATO加盟に値するとも述べ、ロシアを激怒させた。米欧とロシア双方と話ができることを売り物にしているエルドアン氏がプーチン氏を見限ったと判断するのは早計だが、この変化には注目しておくべきだろう。