2024年6月17日(月)

教養としての中東情勢

2023年7月13日

「潮時」とみたか?

 米紙などによると、バイデン政権当局者はトルコに対し、スウェーデンのNATO加盟を容認すれば、F16の供与を最終的に決める米議会を説得しやすくなる、との働き掛けを行ってきた。200億ドルに上るこの供与問題はトルコがロシアから最新の防空システムS400を導入したことで米国が反発、棚上げ状態になってきた。

 もう一つ、忘れてはならないのはトルコ経済の低迷だ。経済は通貨リラの下落に伴うインフレの高進や2月の大地震の復興費などがかさんで悪化、エルドアン氏は緊急対応を迫られている。このため同氏は金利政策の変更も強いられているが、経済的な苦境から脱却するためには欧米との関係改善が必要だとして、スウェーデンの加盟容認に傾いたようだ。

 結局のところ、エルドアン氏は米国やスウェーデンから譲歩を獲得し、トルコの存在感を十分に示すことに成功、「これ以上反対し続ければ、逆に同氏に対する反発が激化し、NATOの中で孤立しかねない。潮時だ」(同)との判断に至ったとみられている。

EU加盟問題も持ち出す

 一連の流れの中で、欧米の首脳らが「またか」と眉をひそめたのはエルドアン氏がスウェーデンのNATO加盟とトルコのEU加盟問題を関連付けた時だ。同氏は「EUへの道を開いてほしい。そうなれば、スウェーデンに道を開く」「われわれは50年以上もEUに締め出されてきた」などと語り、新たな要求を突き付けようとした。

 トルコは1980年代からEU加盟を要望。1999年に加盟候補国となり、2005年には加盟交渉が始まった。しかし、16年のクーデター未遂事件後、エルドアン政権による反体制派弾圧が激化し、人権や法の支配といった価値観がEUの基準に合致しないとして加盟交渉はストップし、再開の目途は立っていない。

 トルコがEUの加盟国である近隣のギリシャやキプロスと敵対関係にあることも交渉が進展しない要因とされているが、背景にはトルコが宗教的にイスラム教国であり、民族的にも白人ではないという「差別問題」がある、との指摘も。一方でトルコはEUとの合意で、欧州に押し寄せる中東からの難民の防波堤になっており、エルドアン氏からすれば、厄介な問題だけを押し付けられているとの感情も強い。


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