2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年7月28日

 上海の欧米系企業に勤務する筆者の知人は、もともと大の海外旅行好きで、コロナ前、日本にも1年に2回は旅行にきていた。とくに関西地方が好きで、瀬戸内海の島にあるホテルや民宿に宿泊するなど「通」な個人旅行をしていたが、その知人はコロナ禍で海外に行けない分を国内旅行に切り替えた。知人のSNSを見て筆者もそのことは知っていたが、改めて連絡を取ってみると、こんな答えが返ってきた。

 「これまで旅行といえば海外旅行、というほどほど海外が好きでした。とにかくまとまった休暇があれば、たとえ3~4日間でも海外を旅行していましたが、国内に目を向けてみると、意外に国内もおもしろいな、と思いました。

 とくに雲南省や貴州省は少数民族が多く、上海などの大都市とは文化が全然違う。そういう地方の民宿に泊まるのも面白いし、これまで見たことのない絶景もあり、SNS映えします。コロナ禍で発見した、数少ない余暇の楽しみ方のひとつです」

Z世代は〝疑似日本体験〟で満足も

 似たような意見はほかにもある。以前、お花見シーズンに中国人から聞いた話だが、「日本のお花見は確かにすばらしいですが、中国でもお花見はできます。しかも、中国の場合はスケールが大きい。滝などもそうです。米国とカナダの国境にある『ナイアガラの滝』は世界的に有名ですが、中国にも有名な滝はたくさんある。そういうところを旅行して歩くのも楽しい。海外はネットで、いくらでも映像を楽しむことができます」と話していた人もいた。

 中国ではコロナ禍で日本料理がブームとなったことは『料理の注文に変化 中国で日本流の「おまかせ」が大ブーム!』でも紹介したが、中国の日本料理のクオリティが非常に高くなり、疑似日本体験が容易にできるようになったことも、「わざわざ現地まで行かなくてもいいのでは……」という考えに結びついているのかもしれない。

 とくにZ世代の若者はSNSネイティブで、SNSで世界中の情報を入手することが当たり前の生活を送っている。いつでも、どこでも、海外の情報にアクセスできること、コロナ禍で余暇の使い方が多様化したり、嗜好が変化したりしていることも、彼らの海外旅行が予想以上に回復していない要因のひとつといえるだろう。

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