2024年12月4日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年7月28日

 「大学生の中でも一部の富裕層は、すでにゴールデンウイーク(GW)頃から日本など海外旅行に行き始めています。知人の20~30代でも富裕層は海外旅行を再開しています。しかし、多くの若者は大学を卒業しても就職すらできない状態です。

 6月はちょうど卒業シーズンでしたが、私が勤務する大学でも、卒業=即失業、という言葉が飛び交い、ゾンビスタイル(倒れ込み、死んだような姿。自虐を表す)で写真を撮ることが流行るなど、投げやりな学生が多かった。一部の大学生は少しでも箔をつけるために大学院(修士課程)に進学しましたが、それは親に経済的余裕がある場合。それ以外の大学生はブルーカラーの職でもいいから就職するか、アルバイトをするか、引き続き就職活動をするか、です。海外旅行どころではない、というのが本音ではないでしょうか」

 確かに、中国国家統計局によると、6月の若年層(16~24歳)の失業率は21.3%と過去最悪だった。全世代の失業率(約5.2%)の4倍で、実に5人に1人が、大学を卒業しても職を得ることができない状況だ。

 また、大学を卒業後、無事に就職して数年ほど経った20代~30代の若者も、一部の富裕層を除いて海外旅行に行けるような状態ではない。北京市や上海市などの大都市では、もともと親が住宅を保有している地元住民以外は、地方から進学や就職でやってきた人々だ。その数は年々増えているが、市内に持ち家がない彼らは高額な家賃を支払って生活しなければならない。

 上海に住む筆者の20代の知人男性は地方出身だ。大学が上海だったので、そのまま上海の日系企業に勤務しているが、「日系の多くは給料が安いので、たとえビザが取得できるようになったとしても海外旅行は難しいです。家賃や生活費も高いので」と話していた。

コロナ禍を機に中国国内への目も

 このように、若者世代はごく一部の人々を除き、海外旅行に行く経済的な余裕はなさそうだ。しかし、その一方で、それとは別の問題も起きているのではないか、と筆者は感じている。

 コロナ禍から始まったことだが、若者の目が海外よりも国内に向き始めたということだ。コロナ禍が始まって以降、中国人の出国は厳しく制限された。ゼロコロナ政策もあり、たとえ大型連休があっても、上海市在住者ならば、上海市から他省へ移動することはできなかった。所属する会社や学校の担当者から禁止されたり、自粛を求められたりしていたからで、これは他省でも同じだ。

 そうしたこともあって、彼らの多くは市内にある、比較的人が少ない公園や飲食店などに友人と出かけたり、友人宅に集まったりするしかなかった。また、ゼロコロナ政策が緩み、省を跨いで移動することが許されるようになったときには、実家に帰省したり、国内旅行をしたり、映画やショッピング、食事を楽しんだ。


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