2024年5月20日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年8月1日

 日本全体で発生するCO2のうち、約2割は車やトラックなど運輸部門が占める。エタノールなどエネルギー問題に詳しい横山伸也・東京大学名誉教授は「2030年の政府のCO2削減目標達成のために、電気自動車や燃料電池車などの導入が期待されているが、これだけでは目標達成が難しいのが実態である。しかし、従来車やハイブリッド車などにE10バイオガソリンを使えば目標値は達成でき得る」と話し、今後、日本でも「E10」の普及を目指すべきだと訴える。

 エタノールの導入は新たなインフラ整備がほぼ不要なのもメリットのひとつだ。

日本では目に見えない形で普及

 とはいえ、これまで日本ではエタノールを混ぜたガソリンが全く存在しなかったわけではない。エタノールと石油系ガスのイソブテンを合成した「ETBE配合バイオガソリン」という名で07年から使われていた。

 ETBEは「エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル」の頭文字。エタノールのままだとエンジンの金属部品を腐食させたり、ゴム材を膨潤させたり、さらに水に溶けだして蒸発しやすいという弱点があったため、石油業界がETBEという形にしてエタノールを活用してきたわけだ。

 ただ、ガソリンに占めるエタノールの割合は2%弱で、ETBEバイオガソリンの導入量は年間50万キロリットル(kℓ)(原油換算)と少なく、日本全体のガソリンの1%にも満たない量だ。つまり、日本ではドライバーの目に見えない形でエタノールがごくわずかながら流通していたのである。そこに風穴を開けようとしているのが中川物産の「E7」である。

電気自動車にも弱みはある

 そういう動きに対し、エタノールを導入しなくても、電気自動車があるではないかという疑問もあるだろう。そこに誤解がある。

 確かに電気自動車は走行中にはCO2を排出しない。しかし、バッテリーの充電時に必要となる電気は、化石燃料を使う火力発電に頼っているのが現状である。また、車のバッテリー(蓄電池)を生産するときには大量の電気と化石燃料を使う。電気自動車は化石燃料なしでは製造することも走ることもできないのだ。

 さらに別の問題もある。バッテリーの製造にはコバルト、ニッケル、マンガン、リチウムなどの希少金属(レアメタル)が不可欠だ。こうした金属の製錬・生産に伴う環境汚染のほか、これらの希少金属を豊富に有する中国への依存を作り出すリスクも想定される。電気自動車にも弱みはあるのだ。

「バイオ燃料・合成燃料議員推進連盟」誕生

 しかしながら、ちまたでは近いうちにガソリン車が消えてしまいそうなイメージがあるが、そんなことはない。米国エネルギー情報局によると、2050年になっても、世界ではガソリン車が約8割を占めると予想されている。まだまだエタノールの出番は続くのだ。

 では、今後、日本として何をすればよいのだろうか。そのヒントを与えてくれるのが、「国産のバイオ燃料や合成燃料の活用推進を目指す自民党有志の議員連盟」(バイオ燃料・合成燃料議員推進連盟)の会長を務める甘利明・衆議院議員の発言だ。


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