――太陽光や風力など再生可能エネルギーに頼ることはできませんか。
風力と太陽光は、エネルギーミックスに重要な役割を果たしており、場所によっては他の技術より、これらの発電方法に適している地域もあります。しかし、問題の鍵は、それらが化石燃料に代わることができる地点まで来ているかどうか、単純には測ることができないという点です。原子力とは異なり、再生可能エネルギーを使用するために電気システムをネットワーク化するとなると、化石燃料に置き換えて使えるレベルで実用化し、運用していくためには、エネルギーインフラ全体の完全な再構築が必要になります。これは莫大な投資であり、実際に実行に踏み切った国はまだありません。
また、再生可能エネルギー源(風や日光など)の確保が確実でない時のためのバックアップとして、我々は旧来の化石燃料インフラを引き続き維持していく必要もあります。これらは、再生可能エネルギーが実際に化石燃料にとって代わるのを妨げている深刻な問題であり、すぐには解決しそうもありません。他の国にも増して風力と太陽光に多く投資(20年間、数千億)したドイツでさえも、今日の電力供給源の割合は太陽光が5%、風力が7%という状況です。彼らはまだ石炭の生産能力も拡大させており、原子力発電所を廃炉にするという判断のおかげで、彼らの二酸化炭素排出量は実際に増えています(日本もそうであるように)。
風力と太陽光は、かつては大規模に発展しましたが、相当な数の反対意見にも直面しています。風力と太陽光で、全ての電力を供給できるため、原子力は必要ないという議論は危険な絵空事です。もしその説が真実ならば、数多くの良識ある人々が原子力発電を発展させ、支持しようとする必要はまったくないはずです。
私は、個人的な利益関心のために、原子力推進を唱えているわけではありませんし、原子力それ自体には関心がありません。私が原子力を推進しようと思うのは、それが、死や疾病を引き起こし、海の水を酸性に傾かせ、気候が制御できないほど乱れ始めている原因である、化石燃料の使用を締め出す唯一の手段であると気づいたからに他なりません。
この数十年に亘り、反核の活動家たちによって提示されてきたあらゆる定説や神話にかかわらず、原子力ははるかに優れた選択肢です。60年代に作られた原子炉が、未曾有の規模の津波によって流されたことで起きた、今回の恐ろしい(そして、防ぐことができたはずの)一回の事故を理由に、完全に原子力エネルギーを断念してしまうのはナンセンスです。
日本は、地球上で最も洗練された最新技術でもって、現在の原子力施設を取り替えることに投資するべきです。このことは、日本のエネルギー供給の自活を維持し、全く新しい輸出産業を発展させ、世界中の羨望を日本に集めるでしょう。
今日の状況のように、化石燃料に立ち返る一方で、エネルギーの自活を決してもたらさない再生可能エネルギー施策に浪費し続けるのはとんでもない大間違いである。私はそう考えています。
ロバート・ストーン監督
1958年イギリス生まれ、ニューヨーク在住。初監督作『ラジオ・ビキニ』(1987年)がアカデミー賞長編記録映画賞にノミネートされ高い評価を得る。その後、ディレクター、作家、編集者、カメラマンと幅広く活躍する傍ら、アメリカ史、大衆文化、マスメディアや環境問題などのテーマを独自の視点で鋭く切り取る作品を意欲的に制作。最新作『パンドラの約束』は2013年のサンダンス映画祭で上映され注目を集めた。6月12日より全米で公開。人生のほとんどを反核に捧げてきたにもかかわらず、考えを180度変え、原子力推進を訴え始めた著名な科学者や環境保護運動家、ジャーナリストらに主張の機会を与えている。
映画『パンドラの約束』
ロバート・ストーン監督 10月来日予定
問い合わせ先:フィルムヴォイス(株)
03-5226-0168 担当:山森
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