2024年7月16日(火)

プーチンのロシア

2023年8月23日

 ロシア国家統計庁のデータによると、22年の固定資本投資(総固定資本形成から、政府による武器の調達等を差し引いたもの)の前年比増加分の多くが、連邦財政と地方財政を資金源としたものとなっている。また、個人消費については、年金および最低賃金が、例年年初に行われる前年インフレ率に基づく増額(22年は+8.6%)に加え、6月1日から、さらに10%ずつ引き上げられたことが大きい。ロシアの年金基金の赤字は、恒常的に連邦財政から補填されていることから、個人消費も財政支出によって下支えされた側面が強い。

(出所)ロシア国家統計庁より、筆者作成 写真を拡大

23年は政府消費が経済を下支え

 ロシア経済が財政支出によって支えられていることは、業種別の実質GDP成長率や成長寄与度からも明らかだ。22年には、西側諸国の制裁や外資企業の撤退により製造業や卸売・小売業など、多くの業種がマイナス成長となったのに対し、建設業と公務・国防・社会保障は、それぞれ5.0%、4.1%のプラス成長となり、これら2業種を合わせてプラス0.5%Ptの成長寄与度となった。建設業の成長は、道路やパイプラインなど、輸送インフラ・プロジェクトへの財政支出の拡大によるものとみられている。なお、農林水産業は6.6%ものプラス成長となったが、これは、ロシアの穀物輸出が西側諸国の制裁の対象とはなっていないことによるものだ。

(出所)ロシア国家統計庁より、筆者作成 写真を拡大

 ロシア経済が財政支出によって支えられている構図は、23年に入ってからも変わっていない。23年1~3月期の実質GDP成長率は前年比マイナス1.8%となったが、内訳をみると、政府消費が前年同期比で+13.5%と大幅に増加し、その成長寄与度はプラス2.3%Ptに達した。政府消費の増加が無ければ、1~3月期の実質GDPは前年同期比マイナス4.1%となっていた計算となる。

(出所)ロシア国家統計庁より、筆者作成 写真を拡大

 一般に、政府消費の主な構成要素は、公務員賃金や政府による消耗品・サービスの購入であることから、1~3月期のロシアにおける政府消費の急増は、主に兵員等への賃金の増額によるものであったと推察される。


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