国民福祉基金の流動資産の残高は、22年の1年間で、ルーブル換算額では2.3兆ルーブル(米ドル換算額では263億ドル)減少した。ルーブル換算での減少額(▲2.3兆ルーブル)の内訳を試算すると、財政赤字の補填のための取崩しが▲3.0兆ルーブル、非流動資産への転換が▲1.0兆ルーブル、為替レート変動による評価損が▲1.0兆ルーブル、財政黒字だった21年の財政余剰の繰入が+2.7兆ルーブルとなる。
プーチンが〝出口〟を考える時
23年については、国民福祉基金への繰入は予定されていない一方、国内産業の支援を目的に非流動資産への転換は予定されている。このため、23年の為替レート変動による評価損益をゼロと仮定し、かつ、22年と同額の財政赤字補填のための取崩しと非流動資産への転換が23年に行われるとすると、23年末時点の国民福祉基金の流動資産の残高は、2.1兆ルーブルにまで減少する計算となる。国民福祉基金の流動資産は、24年には底をつく可能性が高いと言えそうだ。
国民福祉基金の流動資産の枯渇は、戦争の継続と国内経済の下支えの両立を可能にしたこれまでの財政運営が、立ち行かなくなることを意味している。プーチン政権は来年にかけて、停戦に向けた取り組みを本格化させざるを得ない状況に追い込まれてきたと言えそうだ。
『Wedge』2022年6月号で「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」を特集しております。
ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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