2024年7月16日(火)

プーチンのロシア

2023年8月23日

ロシア財政はいつまで下支えできるのか

 では、ウクライナ侵攻後のロシア経済を支えている国家財政の状況はどのようなものだろうか。22年の連邦財政は、当初予算では1.3兆ルーブルの黒字が見込まれていたが、実績では、歳出の拡大により3.3兆ルーブル(GDP比▲2.1%)の赤字となった。そして、この3.3兆ルーブルの財政赤字の大半(3兆ルーブル)は、過去の油価高騰時の財政余剰を蓄えた、国民福祉基金の取崩しによって賄われた。

(出所)ロシア財務省より、筆者作成 写真を拡大

 23年の連邦予算では、石油・ガス収入の減少により歳入は減少するものの、歳出も削減されることで、収支は▲2.9兆ルーブル(GDP比▲2.0%)と、財政赤字が前年よりもわずかに縮小すると見込まれている。しかし実際には、財政赤字はむしろ拡大する可能性が高いとみられる。

 歳入については、大企業への追加課税等によって予算通りの歳入額を確保することは可能かもしれない。一方、戦争を継続し、かつ国内経済の悪化を食い止めながら歳出を削減するのは、現実的には不可能だ。

 戦争が続く限り赤字が続くと見込まれるロシア財政はいつまで耐えられるのか、そのカギを握るのが国民福祉基金の動向だ。西側諸国の制裁によってロシア政府による海外からの資金調達が困難になり、また、貯蓄率の低さから国債の国内消化にも限りがある中、ロシア政府の預金である国民福祉基金は、財政赤字をファイナンスする上で、最も有効な財源となっている。

(出所)ロシア財務省より、筆者作成 写真を拡大

 国民福祉基金は、流動資産と非流動資産で構成される。流動資産とは、外貨準備の一部として外貨(主に人民元)および金で運用されているもので、財政赤字をファイナンスする場合はこの部分が取り崩される。非流動資産は、ロシアの最大手航空会社のアエロフロートの株式や政府系銀行への預金などのルーブル建て資産で運用されており、財政赤字のファイナンスに用いるのは難しい。


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