2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年9月6日

縁起が良い「いずも」という名称

 一方の「いずも」という名称はどうか? 命名基準は「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」に定められている。護衛艦の名称は「天象・気象、山岳、河川、地方(都市名は使用しない)の名」の中から付与される。進水時には名前が必要なので、通常は、進水式の数週間前に海上自衛隊が防衛大臣に決裁を仰ぐ。この時、複数の候補とさらに予備の名称を準備しておく。大臣が渋ったら、「じゃ、これで」とすかさず別の名前を出す訳だ。これに遡って、海上自衛隊内での検討があるので、1カ月以上前には名前の候補が挙がっていることになる。

 このとき、やはり船乗りの迷信深さが顔を出す。気象、地名等には限りがあり、帝国海軍時に使用された名称も使用されるが、その際には、当該艦艇の履歴を調べる。不幸な経歴を持つ艦名を排除するためだ。誰も縁起の悪い艦に乗りたくない。この点、「出雲」は、英国から購入して日露戦争に参加、第二次大戦終戦間際まで現役として生き残ったのだから、申し分ない。さらに、今年の「出雲」には特別な意味がある。出雲大社で60年振りの「平成の大遷宮」が執り行われたことから、「神のご加護」を得たいという想いがあったと想像できる。

空母「遼寧」 完成までの中国の苦労

 ところで、「空母戦」と言うからには、中国の空母にも触れなければ片手落ちだろう。中国は、8月15日に合わせて空母「遼寧」を出港させて発着艦訓練を実施し、これも大々的に報じた。空母のプレゼンスは格段に大きい。しかし、空母の運用は容易ではない上、建造自体にも技術的困難が伴う。

 1998年、マカオの中国系民間会社が、ウクライナから空母「ワリヤーグ」を購入した。このとき、蒸気タービン・エンジンは撤去されず、自走できる可能性を残している。この艦は2005年4月に大連造船所の乾ドックに搬入され、海軍の塗装が施された。ここから中国の奮闘が始まる。

 修復に当たって二つの難題が中国を苦しめた。

 動力システム改造の責任者であった黄東煜は、「最も困難だったのは動力システムの回復であった」と述べている。実は、中国の意図に気付いた米国がウクライナに圧力をかけたため、エンジンの最も重要な部品でさえ取り外され、残った装備も表記を消されていたと言う。「遼寧」機関長である楼富強は、「蒸気ボイラー内の圧力が高過ぎて危険なため、必要な出力が得られなかった。設計された圧力の値はわからなかった」と述べている。彼らは、設計情報もないまま、試行錯誤で蒸気タービンを修復したということだ。これでは、本来の出力を出せないどころか、欠陥を抱えている可能性もある。


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