その後、21年1月の湾岸協力会議(GCC) 首脳会議の成果として出されたウラー宣言をもとに、UAE・カタール関係の改善が進んでいるものの、両国とも双方に対する競合意識を持っているとみられる。こうしたカタールとの関係性もあり、UAEとしては、カタール産ガスに頼らず、自立的なエネルギー政策を確立するためには、ガスの自給は不可欠であると認識している。
日本はつかむべき好機
UAEはウクライナ危機に伴う世界的なガス需要の高まりを好機だと捉え、ガス供給国としての存在感を強めようとしている。エネルギー研究所によると、22年のガス輸出量は76億立法メートルを記録し、輸出先は第1位がインド(38億、総輸出量の50%)、第2位が日本(18億、24%)、第3位が韓国(6億、8%)となった。
UAEは、ガス供給に係る新規契約も積極的に結んでいる。22年9月、UAEはドイツとLNG供給で合意し、独電力会社「RWE」が調達したUAE産ガスが浮上式LNG輸入ターミナル経由でドイツ国内に供給される。
また23年5月、フランスの「トタルエナジーズ(TotalEnergies)」子会社とも25年までの3年間の供給契約を結んだ。そして23年7月、14年にわたるインド向け長期供給契約(年間120万トン)も締結されるなど、UAEが海外の天然ガス市場での販路拡大に注力している。
さらに、ADNOCガスは8月30日、日本の石油資源開発(JAPEX)と5年間のLNG供給契約の締結を発表した。ADNOCガスは供給量や出荷開始時期に関する詳細は明らかにしていないが、契約締結の背景には、岸田文雄首相が7月の中東歴訪の一環で、UAEを訪問したことがあったと推察される。
日本としては、21年末でカタールとのLNG長期供給契約の終了の影響もあり、カタール産ガスの追加輸入を望めない可能性があるため、UAEからのガス追加供給を千載一遇の機会と捉えるべきだ。UAEは日本にとって主要な原油輸入先であり、経済産業省によれば、23年7月時の原油輸入で、UAEがサウジアラビアを抜き、最大の調達先(総輸入量の41.4%)となった。
日本・UAE関係は資源貿易に加え、多岐にわたる分野で深化してきた。そして現在、日本はUAEが取り組む電源構成の多角化政策や天然ガス開発を積極的に支援することで、二国間関係を更に強化できるだろう。この先、UAEがガス輸出量を飛躍的に増加できれば、UAEが原油に続き、天然ガスでも輸入先の1つになることが期待できることから、UAEは日本のガス安定確保の上でも重要な役割を担いつつある。