また、賞味期限が「おいしさの目安」と知ってはいても、期限を過ぎた食品を食べるのはなんとなく嫌と思う人は少なくない。冷凍庫のアイスの賞味期限切れに気づいた人が、「期限切れだから」と食べずに捨ててしまうとしたらなんとももったいない。表示がなければ気にしないで食べるのに、表示があるがゆえに廃棄されるとすれば、食品ロスの片棒をかついでいることにならないだろうか。
卵と賞味期限の問題
意外と知らない人が多いのが卵の賞味期限についてだ。この期限は卵を「生で食べられる期限」で、これを過ぎても加熱調理すれば安全に食べられる。その期間は、一般の家庭で冷蔵保存する場合、購入してから約3週間が目安といわれる。
卵の賞味期限は、食中毒の原因となるサルモネラ菌が急速に増殖を始める前までの期間とされ、季節によって日数が異なる。日本卵業協会は、夏季で採卵後16日以内、冬季で同57日以内を目安としているが、実際はこれより短い日数を期限としているものが多い。それにしても冬季であれば2カ月近く生食しても大丈夫とは驚きだ。
筆者が卵の賞味期限に興味を持ったのは約20年前、京都の養鶏組合が半年前の卵の採卵日や賞味期限を偽装して出荷したことが報じられたのがきっかけだ。いくらなんでも半年前の卵の賞味期限を偽装して売るのはまずいだろうと思ったが、この卵を食べた人から食中毒患者が続出したわけでもなく、「卵っていったいいつまで食べられるんだろう」と思ったのだ。
このとき取材した専門家は「野菜や肉なら冷蔵庫に入れても2~3カ月もすれば腐敗や変色してくるが、卵は見た目でほとんど変わらない。おそらく1年前の卵でも冷蔵保存されたものなら分からないだろう。腐敗していなければ、味の異変を感じなくても不思議ではない」と話していた。
ただし、サルモネラ菌が増殖していても見た目では分からないので、異変がないから生で食べても大丈夫というわけではない。健康な大人なら少量のサルモネラ菌で食中毒になることはほとんどないが、古い卵では菌数が増え、生で食べると食中毒となる可能性がある。
とはいえサルモネラ菌の菌数が多い卵も加熱すれば安全に食べられる。半生のふわふわとろとろオムレツでなく、しっかり火を通した卵焼きがお勧めだ。