2024年5月14日(火)

食の「危険」情報の真実

2023年10月2日

 菓子メーカーのシャトレーゼ(山梨県甲府市)が9月7日、店頭で冷凍販売しているスイーツで賞味期限の書き換えが行われていたとして対象商品の自主回収を発表した。賞味期限の書き換えは食品表示法に違反する行為だが、そもそも対象商品は冷凍された食品。設定された賞味期限を超えたからといって安全に問題があるわけではない。

(Amarita/gettyimages)

 賞味期限は「過ぎると食べられない」と誤解している消費者も少なくなく、自主回収した商品は廃棄するしかなくなり、食品ロスという点でも問題だ。食品を安全に食べるのはもちろん、食品ロスを減らすためにも、賞味期限や消費期限について正しい理解が不可欠だ。

「おいしく食べられる」期間よりも短かった期限

 ご存じの方には釈迦に説法だが、食品の期限表示には「消費期限」と「賞味期限」がある。消費期限は「安全に食べられる期限」で、傷みやすい食品に記載され、この期限を超えたものは腐敗していたり食中毒を引き起こす細菌が増えたりしている可能性があるので食べない方がいい。

 一方、賞味期限は「おいしく食べられる期限」で、賞味期限を過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではない。シャトレーゼの書き換えは賞味期限の方だ。

 自主回収した商品は冷凍販売用のチョコレートケーキ「濃厚ショコラテリーヌ」。回収した商品は今年2月20日に製造されたもので、当初の賞味期限は6月20日。これを、期限が切れる約1カ月半前の5月9日、146ケース(1168個)を再包装し、賞味期限を9月6日に変更。同様の書き換えを7月17日までに計6回、543ケース(4344個)に行い、中には当初の賞味期限より5カ月近く延ばしたものもあった。

 もともとの期限より5カ月もさばを読むとはけしからんと思うかもしれないが、そもそもこの商品は冷凍販売用だ。「おいしく食べる目安」としての賞味期限の設定は食品によって異なるが、科学的・合理的な根拠で設定される冷凍スイーツの賞味期限は製造から1年後とされる。

 シャトレーゼが当初設定していた賞味期限はその3分の1の4カ月後で、本来の期限よりかなり短い。賞味期限が短いと販売期限も短くなり、売れ残るリスクも高くなる。賞味期限が切れる1カ月半前に書き換えたのは、3分の1ルール(食品メーカーと小売店の間に存在する商習慣)による販売期限が切れたためといえ、売れ残り商品の処分に困って書き換えたのかもしれない。

 賞味期限の書き換えを指示したのは子会社の社長(9月1日付で懲戒免職)だが、シャトレーゼの広報担当者によると、食品の安全については熟知していたという。「食べても安全に問題がなく、書き換えた期限でも科学的・合理的な根拠で設定される本来の賞味期限より前だからいいだろう」。そんな思いがあったのだろうか。


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