サウジとイスラエルの国交つぶしか
イスラエルとアラブ諸国はこれまで4度の中東戦争を戦い、アラブ側は長い間、パレスチナの地を奪回するという大義を掲げてきた。だが、エジプト、ヨルダンがイスラエルと国交を樹立して離脱。2020年にはトランプ前米政権の仲介で、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコがイスラエルとの関係正常化に踏み切った。
バイデン政権はアラブの大国サウジアラビアに対し、今春からイスラエルとの国交樹立を働き掛け、サウジの実質的な支配者であるムハンマド皇太子が米テレビとのインタビューで「初めて現実的になっている」と語るなど、その可能性が高まっていた。
サウジはこれまで「パレスチナ独立国家をイスラエルが許すのが国交の条件」との立場を取ってきた。しかしパレスチナ側にとってパレスチナ独立国家が実現しないうちにサウジがイスラエルと関係を正常化することになれば、決定的な打撃となってしまう。ハマスがこのサウジの動きをつぶすために賭けに出た可能性はあるだろう。
イランが指令したのか
バイデン政権はせっかくのイニシアチブが台無しになりかねないとしてハマスの攻撃を苦々しくとらえているが、ハマスの後援者であるイランが背後で指令していたのではないかと疑っている。バイデン大統領が今回の混乱を利用しないよう、暗にイランに警告したのにはそうした背景がある。
ハマスのスポークスマンは攻撃を実行するのにイランから直接的な支援を受けたとBBC放送に語っている。
ハマスはアラブ世界に共にイスラエルと戦うよう呼び掛けた。イランの支援を受けるレバノンのシーア派組織ヒズボラがイスラエルの陣地3カ所を攻撃したとの声明を発表しており、第2戦線が開かれる恐れもある。
何よりもイスラエル軍のガザ侵攻は不可避との見方が強い。戦闘の激化と長期化が懸念される。