このように、フィールドワークそのものが内包する課題とともに、戦後日本における「辺境」の複雑な事情を浮き彫りにしたのが、九学会連合の共同調査であった。
<九学会連合の共同調査は、すべての植民地・占領地を失った戦後社会にあって、「辺境」地域のフィールドワークを通じて、「日本人」「日本文化」を(再)定義する試みだったと考えることができるだろう。>
著者は、日本の戦後史における九学会連合共同調査をそう位置づける。
高度経済成長とともに九学会連合は「その歴史的役割を終え」たのかもしれないが、ふたたび日本列島の辺縁がきな臭くなってきた昨今、対馬をめぐる日韓の軋轢や、「日本人」の証明を求めた奄美の人びとの心情を振り返るのは、大いに意味のあることに違いない。
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