孫のダニエル・リフシッツさんがテルアビブで彼女の解放が確認される前に語っている。「彼女は生涯通じての人権活動家であり、平和活動家で、10年以上に渡って病気のパレスチナ人をガザ地区からイスラエルの病院まで連れて行き、病気や癌の治療を受けさせてきた」。彼女が解放された理由かもしれない。
彼女の証言からわかることは、人質は小グループに分けられ、別々のトンネルに拘束されている可能性が高いということだ。イスラエルのガザ地区地上侵攻を成功させるには、ハマスが築いた広大な地下トンネルの正確な地図と人質が拘束されている正確な位置が必要になってくるのだ。
敵の位置を知る技術とは
ハマスの地下トンネルの正確な地図を作るという課題に対してイスラエルの諜報部員が用いた技術は、ハイパースペクトル・イメージング技術というものだ。
この技術は1970年代にNASAによって初めて開発された技術で、物体が持つ固有のスペクトル(分光情報)を分析することで、人間の目では識別が困難な物質の特性や状態を評価することができるものだ。リモートセンシング分野の技術の一つで、地球観測衛星などに用いられている。
地質学者は、この技術を使用して、地下油田や鉱床の発見に初めて成功している。航空機や衛星に搭載する装置は大掛かりで非常に高価なものであるが、近年のイメージセンサー技術やコンピュータの発達により、小型で高性能なハイパースペクトルカメラが開発されている。
イスラエルでは、ベンチャー企業「ボヤージ81(VOYAGE81)」が、スマートフォンの簡単な写真から皮膚と髪の特徴を分析して顔の血流を検出し、メラニンやヘモグロビンを測定できるなど、ハイパースペクトル・イメージング技術の先進化に取り組んでおり、自国での応用が可能だ。これらの技術を使用すれば、土壌密度やコンクリートや金属、鉄筋などの地下埋設物も読み取ることができるため、地下トンネルの地図の作成に役立つ。
イスラエルの諜報員は、これらのセンサーを搭載したドローンをガザ地区上空に上げ、データを収集しているのだ。