これに対して旅団の共産党委員会では、教育による指導を行いながら訓練の作風、試験、演習の方法を改善させることにした。「敵」に撃たれた人員や兵器装備は すぐに戦闘からはずされるというわけだ。
「実戦はスローガンを叫ぶことではなく、
はやりの標語をぺたぺた貼ることでもない」
7月中旬に行われた旅団の軍事訓練情勢分析会議での発言で、無線通信での簡単なコミュニケーションについてでさえ「複雑な電磁環境下での」と言及された。ある科目では情報化との関連があるわけではないのに、「情報化の条件下での」と仰々しく述べられたために、それを聞いた旅団の指揮官から「我々の条件では複雑な電磁環境を設定するのは難しいのだから、大げさに言い立てる必要はない」との小言を受け、大隊や中隊の幹部たちは耳を真っ赤にしていた。
旅団指揮官によれば、こうした現象が起きる主な原因は兵士たちがよからぬ影響を受けて、ただ空虚にスローガンを叫び、標語をぺたぺた貼ることからきているのだという。「実戦はスローガンを叫ぶことではなく、はやりの標語をぺたぺた貼ることでもない」というわけだ。
旅団の党委員会では新たな戦法を考え、創造的活動を展開することになった。兵器装備は比較的おんぼろであったが、装甲合成大隊の演習では新たな戦法を編み出して、集団軍の指揮官たちから好評を受けた。
またこの旅団は軍区のテストを受け、戦車大隊は良好な成績を収め、軍区が選び出した3つの機甲部隊の中でトップだったという。
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【解説】
この記事はハッピーエンドで終わっているが、そもそも軍の演習において問題が発覚し、それについての改善がどのように図られたのかについて軍の機関紙が伝えることは極めて稀である。習近平政権になってから軍の汚職摘発や規律を強化する措置がとられ、その主たる原因が官僚主義や形式主義の蔓延だと捉えられていることもこうした報道の背景にあるだろう。
習の主張する「戦って勝つ」部隊は演習をそつなくこなす軍隊ではないはずだ。それだけに蘭州軍区傘下の陸軍機動部隊である第47集団軍の演習が皮肉を込めて名指しで伝えられたのは興味深い。