日本ならではの支援とは
今回のハマスのテロ行為は明確な国際法違反であり、イスラエルには自衛権行使の権利がある。ただし、自衛権の行使には、武力行使を訴える以外に自衛の手段がないという「necessity(必要性)」と、受けた武力攻撃に対して均衡のとれた範囲内で反撃するという「proportionality(均衡性)」の二つの前提条件がある。
日本はイスラエルに対し、均衡性を守るよう強く自制を求めるとともに「二国家解決を目指すべきだ」という正論を言い続けることが重要である。
その上で、両国には、日本らしいやり方で、惜しみなく経済・科学技術的支援や民生支援をしていくべきだ。例えば、「医療船」を派遣し、イスラエル人、パレスチナ人分け隔てなく治療を行う医療協力の可能性を模索するのも一案だろう。当然、国内では「そうした危険地域に医師は派遣できない」などの反対意見も出るかもしれないが、これからの時代、日本は「できない」理由を探すばかりでなく、「何ができるか」を真剣に考えていくべきだ。
これまで、国際協力機構(JICA)が途上国に対して現地にスキルを根付かせるよう、きめ細やかな経済協力を行ってきた。イスラエルとパレスチナに対しても同様の姿勢が求められる。
大国は「大国ヅラ」をしたくなるものだ。欧米や中国は、途上国に資金とマニュアルだけを与えるような上から目線の経済援助を行うことも少なくない。その点、日本がこれまで途上国を中心に行ってきた支援は現地で高く評価されている。世界に貢献するということは、将来、必ずや自国の国益につながるという発想が大事である。専ら「取られる」のではなく、やがて自国に「還元される」という発想だ。外務省のある先輩が残した箴言であるが、日本はこれからも「大国ヅラをしない大国」として世界に貢献していくべきだろう。