2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2023年12月19日

現地で見たCOP28の多様な側面

 現在、筆者は調査・研究のため、UAEの首都アブダビに滞在することから、COP28の会場を訪問した。会場の場所は、ドバイ国際博覧会場の跡地である、エキスポシティ・ドバイ(Expo City Dubai)となり、ドバイ中心部からも公共交通機関などで容易にアクセスできる立地である。

 現場から見たCOP28は、気候変動対策に関する有益な機会を提供していた。まず、COP28の会場には、企業が自社の製品を宣伝するブースが多く設けられ、国際会議の傍らでビジネス交流が活発化していた。こうした商談の機会を活用することで、再生可能エネルギーや水素、原子力といった分野での取引が交わされている。

 次に、COP28開催に併せて会場内外で、気候変動対策に関連するワークショップが開催された。世界各地の大学や研究機関、国際機関から、環境やエネルギー分野を専門とする研究者と実務者が一堂に集結し、活発な協議が行われた。来場者は登壇者に質問することができ、国際会議では直に聞けない、専門家の率直な見解を得られる貴重な機会であった。

 そして、COP28の会場には多くの一般来場者の姿が見られたことから、今回のイベントが環境意識の向上に一役買っていると考えられる。特に、教育機関による団体ツアーが開催されており、児童生徒らが会場で環境学習を実施できるようになっていた。会場ではドバイ万博に続き、ゴミの分別が徹底されていた他、VR(仮想現実)を通じて、地球温暖化や海水上昇、旱魃といった気候変動の悪影響を目の前で体験できる取り組みも行われていた。

 UAEは年間平均降水量が極めて少ないものの、主に海水淡水化を通じて飲料水を確保できることから、現時点で水不足に直面していない。一方、気候変動がもたらす自然災害は、他人事ではない。

 たとえば22年7月、過去27年間で最多の降水量が記録され、シャルジャ首長国やフジャイラ首長国などが大きな被害を受けた。こうした大規模自然災害の増加や地域的被害の拡大を防ぐためにも、一人ひとりが気候変動対策を意識していくことが大切である。

最終合意に向けた攻防

 UAEはCOP28の議長国として、成果文書の最終合意取り付けに向け、加盟国間の意見調整を行っていた。COP28では、気候変動の被害を受けた途上国を支援する「損失と損害」基金の設立で合意し、各国・国際機関が運用金の拠出を相次いで表明した。

 UAEも「損害と損失」基金に1億ドルの拠出を表明した他、途上国向けの気候変動対策への支援目的とした300億ドル規模の基金「アルテラ(Alterra)」の設立を発表するなど、豊富な資金力を駆使して、気候変動対策での存在感を強めている。UAEはこれまで国内で太陽光発電の新設や、アラブ湾岸諸国初となる原発の導入を行い、中東地域で脱炭素政策を率先してきた国である。

 また、UAEは欧米諸国と連携して、再エネの拡大を最終合意に盛り込むことに成功した。各国は再エネの発電設備容量を、30年までに現在比の3倍に拡大する方針である。この先、太陽光発電や風力発電プロジェクトが増加していくことが予想される。

 COP28での最大の注目点は、化石燃料の扱いに関する議論が進展するかであった。石炭について、21年のCOP26で石炭火力の段階的削減に合意した一方、石油や天然ガスへの具体的な対応は先送りされてきた。


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