その後、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に、欧州諸国は脱ロシア産化石燃料というエネルギー面の課題に直面した。同年、エジプトのシャルムエルシェイクで開催されたCOP27では、天然ガスの利用継続を示唆する「低排出エネルギー」への転換という文言が成果文書に入り、化石燃料の脱却に足踏みした。
COP28は従来通り、主に欧米諸国と小島嶼国連合が化石燃料の「段階的廃止」を主張する一方、石油輸出国機構を中心とする産油国が化石燃料全般に対するいかなる規制にも反対していた。石油輸出国機構(OPEC)側は、化石燃料の消費・生産を抑えるのではなく、排出量抑制に重点を置くべきだと主張する。このためUAEは、COP議長国としての役割と産油国同士の連帯との間で揺れ動きながら、全会一致が原則であるCOPでの合意形成に向けて奮闘した。
UAEは双方の言い分を汲み取りつつ、化石燃料の扱いを段階的廃止から、「代替に向けた努力」や「削減」といった文言に置き換え、産油国に理解を求めた。しかし、サウジアラビア主導の産油国グループはいかなる譲歩も示さなかった。
そして、当初の閉幕日から1日遅れた12月13日、「化石燃料からの脱却」という文言に修正することで、COP28の成果文書は採択された。欧米諸国が当初求めていた段階的廃止からはトーンダウンしたが、石油・天然ガスも含めた化石燃料全般の扱いに言及した初の合意となった。
今後注視すべき具体的行動指針
UAEとしては、石油生産プロセスでの脱炭素化を行うことで、化石燃料の利用と脱炭素政策が両立する点を強調してきた。このため、生産継続への道筋をつくるとともに、欧米主導の過度な化石燃料規制を封じたことで、他産油国との関係も維持できた。
今般の成果文書については、明記された「脱却」が化石燃料全体をどれほど減少させるのか、具体的な行動指針は次回以降のCOPで定めていくのかという問いが残る。また各国にはそれぞれのアプローチを尊重することで、広い裁量権が認められるため、実効性にも疑問が生じる。
いずれにせよ、途上国を巻き込んだパリ協定のように、まずは化石燃料全般の扱いを議題に乗せることに成功した点に着目し、産油国UAEの交渉努力は評価されるべきだろう。