2024年4月18日(木)

中国メディアは何を報じているか

2013年10月16日

 単さんによると、各レベルの政府宣伝部門にとって世論を分析する研修が最も必要だ。政府はネットを管理しなければならないが、前提としてそれを理解しなければならない。新華網も月1度は政党幹部や企業幹部対象にネット世論研修クラスを設けている。段主任は言う。世論監視は常に向上し続け、普及し続けなければならないプロセスだと。

* * *

【解説】

 この記事を読むと中国政府がいかに世論を恐れ、気を使っているかが分かる。反体制的言論取り締まりという目的で行われてきた言論統制が、IT時代の今日、極めて不思議な形に変わってきていることが理解できよう。ネットの世論監視が単に政府による言論取り締まりであるだけでなく、地方や企業を巻き込んだ形で制度化が進められ、ビジネス化さえしている様子がうかがえるのだ。

 人民網サイトによると、「ネット世論分析師」の研修費用は授業料やテスト費用など合わせると6000元超だ。しかし、この職業につくと6000元程度の月収を得られるため、元は取れるということらしい。しかしこのことを鵜呑みにはできない。200万人に月6000元の給与を支払うということは給与だけで年に1400億元の財政支出が必要になるからだ。

庶民への言論統制と
思想学習の強化を求める

 世論の監視や言論統制は、中国で常に行われてきたが、習近平政権になってから政府はとりわけ気を使っていることが分かる。政権交代期に起きた薄煕来事件によって権力闘争や路線闘争が表面化し、そのプロセスで南方週末紙を巡る言論統制の問題が、論争を引き起こしたことも政府の世論に対する警戒感を強めたのだ。

 ネットではリベラル派、保守派が入り乱れて論争が激化し、政府は「現在のイデオロギー領域の状況に関する通報」(中共中央弁公庁9号文件」2013 年4月)という通達文書を出して「7つを語るな(7つとは普遍的価値、報道の自由、公民社会、公民権、党の歴史的誤り、特権的資産階級、司法の独立:訳者)」と庶民への言論統制と思想学習の強化を求めている。

 数日前には国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局が、来年の記者証発行には「マルクス主義報道観」や「中国の特色ある社会主義」を含む6項目の試験の受験と合格を義務付ける通知を出したばかりである。これにより25万人の記者が免許更新のために政治思想テストを受けることになった。


新着記事

»もっと見る