2024年7月20日(土)

BBC News

2024年7月20日

イギリス政府は19日、停止していた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を再開すると発表した。

デイヴィッド・ラミー新外相は下院に、UNRWA職員とテロ組織との関連が懸念された問題について、組織の中立性を確保すると説明を受けたと報告した。

UNRWAについては、イスラム組織ハマスによる昨年10月7日のイスラエル襲撃に職員12人が関与した疑いが今年初めに浮上し、イギリスなど西側の16カ国が資金拠出の一時停止を発表していた。

イギリスが拠出を再開したことで、主要国ではアメリカのみが再開していない状態となった。日本も今年4月に拠出再開を表明している。

ハマスによる攻撃とUNRWA職員の関与については、国連の内部調査が続いている。一方で、内部調査とは別に国連が今年4月に発表した報告では、UNRWA職員数百人がテロ組織に参加しているというイスラエル政府の主張について、イスラエルは十分な証拠を提出していないという結論が出ている。

ラミー外相は下院で、ガザ地区の「悲惨な」人道状況を改善するために必要な規模で、大々的に援助を提供できる組織はUNRWAだけだと説明。ガザ地区の人口200万人の半数以上がUNRWAの食料援助に依存しており、「今後の再建」にもUNRWAの存在は不可欠だと指摘した。

外相は、イスラエル政府の主張に自分も当時「愕然(がくぜん)とした」述べたうえで、国連はその主張を真剣に受け止めており、UNRWAがきわめて高い水準で中立性を確実に維持するよう、「審査を含む手続きを強化している」と説明した。

ラミー氏は、イギリス政府が再開する年間2100万ポンド(約42億円)の拠出は、4月の国連報告で勧告された「運営改革」に向けて適用される資金も含まれると話した。

英外務省によると、うち600万ポンドはUNRWAによる当座のガザ支援に使われ、1500万ポンドはイスラエル占領下にあるパレスチナ自治区やその他の地域への支援提供に充てられる。

UNRWAのジュリエット・トウマ報道官はBBCに、「人道援助を必要とするガザの状況が悪化し続ける、緊急の時期」なだけに、イギリスによる拠出再開を歓迎すると話した。

報道官は、「UNRWAの事業について中立性の原則を引き続き順守すること」など、国連の4月報告書の勧告をUNRWAが遂行しているとイギリス政府に確約したのだと説明した。

コロンナ報告書

国連が4月に発表した報告書は、フランスのカトリーヌ・コロンナ元外相が中心になってまとめたもので、「相当数のUNRWA職員がテロ組織のメンバー」だというイスラエル政府の主張について、イスラエルは「十分な証拠を提出していない」と結論した。

イスラエルは、ガザで働く計1万3000人のUNRWA職員のうち、2135人以上がハマスやパレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)など、イスラエルや米英といった各国政府がテロ組織と認定する組織のメンバーだと主張していた。

この主張について証拠が不十分だとした一方で、コロンナ報告書は、UNRWAが中立性維持、スタッフの身元審査、透明性の確保などについて今まで以上に努力する必要があると指摘した。

イスラエルはコロンナ当局が深刻な実態を無視していると批判。UNRWAはハマスと組織的に結びついていると主張し続けている。

イスラエルは当初、昨年10月のハマスによる奇襲攻撃にUNRWA職員12人が参加したと主張した。

ハマスの攻撃でイスラエルでは1200人が殺され、約250人が人質にとられた。この後のイスラエルによるガザ攻撃で、3万8000人以上が殺害されている。

UNRWAは、イスラエルによる主張が表面化した時点で存命だった問題の職員12人中10人を解雇し、国連事務局の内部監査部が調査を開始した。国連は4月、職員8人が引き続き調査の対象だが、4人については証拠不十分で調査を中止したと明らかにした。また、ほかに職員7人について調査に着手し、4月の時点で6人について調査が続いているとした。

イギリスの武器供与

ラミー外相は下院報告の中で、イスラエルの武器供与を継続すると述べた。これについては同じ労働党内からも、禁止するよう求める声が出ている。

緑の党やパレスチナ支援を掲げる無所属の議員たちと共に、労働党の一般議員14人が、イスラエルの武器禁輸を求め、17日に国王演説を通じて発表された政府の施政方針の改正案を提出したいとしている。

これについて外相は、イスラエルが「世界で最も厳しい地域」で敵に囲まれているだけに、全面的な武器禁輸は不適切だと述べた。代わりに、特定の武器輸出許可をそれぞれ個別に「通常のやり方」で審査し、イスラエル政府が輸出条件を順守しているかイギリス政府の法律顧問たちが確認し続けると話した。

そのほか、「包括的な再点検」が進行中で、それが終わり次第、下院に報告するとも述べた。

ただし、政府内の法的見解を公表するとは約束しなかった。労働党が野党だったころ、ラミー氏は影の外相としてこれを保守党政府に求めていた。

(英語記事 UK to resume funding to UN Gaza aid agency

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/clmy1519v3go


新着記事

»もっと見る