ロシアの裁判所は19日、アメリカ人ジャーナリストのエヴァン・ガーシュコヴィッチ氏をスパイ容疑で有罪とし、警備の厳しい刑務所での禁錮16年を言い渡した。同氏の家族や雇用主の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）、米政府は、非公開で行われたこの裁判は「でたらめ」だと批判している。
ガーシュコヴィッチ記者は昨年3月、ロシア・エカテリンブルクで取材中、米中央情報局（CIA）のために情報を集めていた容疑で逮捕された。
検察側は、ガーシュコヴィッチ氏が米中央情報局（CIA）のために働いていたと主張したが、WSJや米当局はこれを強く否定している。
ロシアでアメリカ人ジャーナリストがスパイ容疑で有罪となるのは、30年以上前に冷戦が終結してから初めて。
判事によると、検察側と被告側は15日以内に控訴することが可能だという。
WSJの発行人オルマー・ラトゥール氏と、エマ・タッカー編集主幹は声明で、「不当に拘束され、家族や友人と離され、取材を妨害され、ジャーナリストとしての仕事をしたために478日間を刑務所で過ごしたエヴァンが、この不名誉で恥知らずな有罪判決を受けた」と批判した。
「私たちはエヴァンの釈放を求め、彼の家族を支援するため、可能な限りの努力を続ける」
「ジャーナリズムは犯罪ではない。我々はエヴァンの釈放に向け最後まで取り組む。こうした慣行は今、終わらせなければならない」
西側諸国の政治家たちも、この判決を一斉に非難した。ジョー・バイデン米大統領は、ガーシュコヴィッチ氏は「何の罪も犯していない」とし、「ジャーナリストでアメリカ人だという理由でロシア政府に狙われた」と述べた。
また、「エヴァンは驚くべき強さで試練に耐えてきた」、「ジャーナリズムは犯罪ではない。我々は、ロシアと世界における報道の自由のために強く立ち続け、報道機関を攻撃しようとする者、ジャーナリストを標的にする者すべてに立ち向かっていく」と述べた。
欧州連合（EU）のジョゼップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、ロシアは「政治化された司法制度」を使ってジャーナリズムを罰していると批判。イギリスのキア・スターマー首相はこの判決を「卑劣」と評した。
アメリカ政府は、ロシアがガーシュコヴィッチ氏を交渉の切り札として拘束していると非難している。
しかしロシア政府は、アメリカが自国民の釈放のために囚人交換に応じる用意があることを承知している。両国政府が、そうした交換について協議してきたことも明らかになっている。
複数のロシア・ウォッチャーによると、有罪判決が出るのが早ければ、交換が間近に迫っていることを意味する。ロシアの司法慣行では、囚人交換には一般的に、すでに評決が下されている必要があるからだという。
