ミレイは、経済状況の更なる悪化に対応するためには「調整」と「ショック」以外にないと強調したが、「調整」は補助金のカット、「ショック」は改革がさらなるインフレを伴うことを意味する。補助金や価格統制など廃止すれば物価のさらなる上昇を招くことが予想される。しかし、ミレイは、ハイパーインフレも厭わずに財政支出削減等の改革を推し進めることを示唆している。
演説では、当面200億ドル、国内総生産(GDP)の5%に当たる歳出削減を目標とするがそれ以上の具体的な施策は明らかにせず、同日18の省を9に削減する大統領令に署名した。新内閣では、マクリ政権で財務相や中央銀行総裁を務めたカプートを経済相に、今次選挙の対立候補であったブルリッチ元治安相を再び治安相に、その副大統領候補ペトリを国防相に任命し、中道右派のマクリ派との連立内閣となった。
注目された出席者の顔ぶれ
就任式への出席者については、外交面でのミレイ政権の評価や世界の極右派の連帯の2つの面で注目された。
選挙キャンペーン中は、バチカン、ブラジル、中国を辛辣に批判していたが、当選後豹変して融和的態度をとり就任式に招待した。ブラジルは外相が、中国は全人代常務委員会の副委員長が出席した。
他方、就任式は、世界の極右ポピュリストが連帯を示す場ともなり、ボルソナーロ元ブラジル大統領、オルバン・ハンガリー首相、スペインVOX党党首、チリの極右派のカスト党首などが参集した。トランプが出席できなかったのは、裁判の関係ではないかとみられる。
さらに、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が出席したことが話題となった。ミレイの反ロシアの姿勢は当選後も変わっていない。
また、ミレイは気候温暖化が人間の責任ではないとしてパリ協定離脱も示唆していたが、ドバイでの国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)にはこの分野で活躍してきた外務省高官を代表として派遣し、この問題でも態度を変えたのではないかとみられている。
このようなミレイの経済政策や外交面での態度の豹変をどう解釈すべきか。ドル化や中央銀行廃止の延期は現実に対応したものであり、中国との関係をとりあえず修復したのも国益の観点から妥協したもので、バチカンやブラジルとの関係も同様であろう。温暖化防止について態度が変わったとすれば対米配慮の面があるのかもしれない。
これらは、ポピュリスト特有の気まぐれ的特徴でもあり、また、中道右派との連立上の必要によるものであるかもしれない。このようなミレイの態度の豹変は、良く言えば現実に対応する柔軟性であるが、悪く言えば単に思慮が足りなかっただけとも言える。