2024年12月8日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月4日

 7月17~18日、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)と欧州連合(EU)の首脳会議が8年ぶりに開催された。それに先立ち、英フィナンシャル・タイムズ紙の7月13日付の社説‘The EU is late to rediscover Latin America’は、欧州がラテンアメリカを軽視していたことを批判するとともに、「南米南部共同市場(メルコスール)」との自由貿易協定(FTA)の早期批准が必要であると論じている。要旨は次の通り。

ブリュッセルで開催されたEU・CELAC首脳会議(写真:AP/アフロ)

 ラテンアメリカは、欧州が関心を持つべき地域だ。

 欧州が国内問題や他地域の危機に気を取られている間に、中国はこの地域に注目し、着実に貿易・投資を拡大し影響力を築いた。中国は、EUに先駆けて、この地域のクリーンエネルギー(ラテンアメリカには世界のリチウム埋蔵量の半分以上、銅埋蔵量の40%以上がある)の戦略的重要性に気付き、鉱山買収を始めた。中国は、今や南米の主たる貿易相手国となり、同地域の対中輸出額はEUと米国向けの合計を上回る。

 欧州は脇役に追いやられるリスクがある。

 EUは、グリーンエネルギー、インフラ、社会プロジェクトへの投資やデジタル技術に関するより緊密な協力を提案して関係緊密化を図ろうとしている。政府関係者は、両地域が民主主義的価値観と文化遺産を共有していることを強調し、2年おきのサミットの開催も期待されている。

 しかし、EUは、南米の最大の投資国で重要な貿易パートナーであり、この関係を発展させるためは、強力な通商上の基盤が必要だ。そのためにはメルコスールとの貿易協定を批准しなければならない。20年の歳月をかけて作成されたメルコスールとの協定は、環境分野の保護措置を要求するEU加盟国の承認が取れていない。ラテンアメリカ側からは、これは農業保護主義によることが透けて見える。

 EUがラテンアメリカとの関係に真剣であることを示したいのであれば、協定を再交渉することなしに残された環境問題を解決する方法を見つけ、迅速に批准すべきだ。そうすれば、何回もの首脳会談よりも強いシグナルを送ることができるだろう。

*   *   *

 CELACは、ブラジルのボルソナーロ政権の脱退やベネズエラ問題により分裂気味であったこともあり、EUとの首脳会議が開催されなかったことが全て欧州側の怠慢というわけではない。しかし、この間、中国は、2015年1月に第1回中国・CELAC閣僚フォーラムを開催し、3年おきに閣僚レベルの会合を開催し、一帯一路構想の下に幅広い分野での協力と大型投資を行い、食料、鉱物、エネルギー資源などラテンアメリカ産品の巨大な輸出市場を提供し、南米の最大の経済的パートナーとなり影響力を拡大した。


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